kurosuke40 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
だってしょうがないじゃないか
1期と2期通しての簡単な感想。
他に行く当てもなく、食い扶持を稼ぐために戦う少年たちの話。
彼らは正義とか悪とかで動くことはなく、ただただ目の前の火の粉を振り払うために戦う。
時間も経験も知識も何もかもない中でも前に進まないといけない。
切羽詰まった状況下の決断はおそらく長い目で見て最適ではない。
メリビットさんが顔を覆ったように「こんなの間違っている」んだけど、
そう彼らを批判できるのは、当事者ではない傍観者だからのように思えてしまう。
当事者も傍観者もどちらが正解と言えない。そんな話。
「無能な怠け者は兵隊にしろ、無能な働き者は即座に銃殺しろ」という言葉があり、
戦場において命令をそのまま実行してくれる存在は作戦完遂には必須で、かつ、深い考えなく命令を変更して動かれると余計な問題が発生するので、兵隊は下手に考えない方が良い。
他に道のない少年兵は(人道的な問題は別として)能力ではなく環境的な素質として兵隊に適格なんでしょうね。
目を見張るのは兵隊として抜きんでて最適化されている主人公のミカで、
ハッシュは追いつこうとしていたけど、ミカの才能・厄災はパンドラの箱よろしく神からのギフトの世界であり、
GH(ギャラルホルン)側からは悪魔との契約にしか見えないですね。
考えないことの強さと恐ろしさを感じますね。
そんなミカの生き様は鉄華団の象徴のよう。
物語の数奇は、ミカが強すぎたことにも一端があるように思えます。
弱くては最初のGHからの襲撃に耐えきれなかったでしょうが、
強すぎたためにクランクとの決闘に勝ち、GHとの闘争や他の利害関係に巻き込まれるようになってしまった。
チョビ髭の言うように、あそこは良心を殺してでも負けるが勝ちだったのかな。
またミカが強すぎたことにより、前への進み方は色々とあるが、愚直に最短で走れるようになってしまった皮肉を感じますね。
強すぎる力は身を亡ぼすという一例で、そこそこの強さであれば身の振り方も考えたでしょうに。
また神からの別のギフトとして、マッキーが「力こそすべて」という価値観を承ってますが、
ガエリオが別の価値観に気付かせようと、復讐という名目の友情を貫いたのが格好良かった。
マッキーから「見えていながら見えないふりをしていた」という言葉を引き出したときがこの作品で一番印象に残っています。
社会的で文化的な資産を生まれつき「持つ者」と「持たざる者」の対立と関わり合いを描いた作品でしたね。
クーデリアとオルガたち、ガエリオとマッキー。他勢力と鉄火団。他にも色々。
面白かった。
蛇足
脚本があれこれ言われているのは、状況だけ用意してあとは登場人物たちが動くように脚本の作り方をしているために、キャラは生き生きするものの、細かい点の整合性は(描写からうかがえる範囲では)難が出てしまっている。
1期はその良い面が出たのだけど、2期は悪い面が出てしまったのでしょう。
2期は滅びゆく鉄華団という大筋のバッドエンドだけど、整合性が弱く、結果的に"なるべくしてこうなった"感が薄い。
私みたいにバッドエンドを肌で感じていた人には拒絶感は少ないだろうけど、
心のどこかで鉄華団が隆盛していくことを願っていた人からしては受け入れられるものではないだろう。
ノンフィクションでは死ぬ死なないは運の要素が強く、事実は小説より奇なりとなるが、
フィクションでは死ぬ死なないは脚本の裁量であり、納得できないと脚本に殺された印象が残る。
戦略的な部分を大いに含む物語はバッドエンドは綿密に描かないと多くの人には受け入れられない節があるんでしょうね。
マッキーの無能化についてはおそらく彼は一騎当千の力を手に入れるまでが目的で、
その先の転覆は実は真の目的ではなかったということなんでしょうかね。
彼自身ただの先導と自己認識してたし。
マッキーが判断基準に伝説を持ち出してきたところは、鉄華団の分水嶺でしたね。うさんくせー。
あそこらへんでマッキーの真の目的と手法がちゃんとわかっていれば。
ただマッキーには実績があったから難しいところでもあったかな。
追記
あと私が脚本が気にならなかったのは、私自身の趣向の問題の気もする。
例えば、オルガの死について。
脚本的には突然「逃げられるより殺しときました」とか一見ふざけるのかとも思えるけど、
脚本の意図はそのあとの鉄華団やミカの内心に迫るためで、
私自身気になるのは内心の方なので、気にならないというか。
そっちの方が見たいという節がある。
もちろん死んでほしくはないのだけど。
物語は思考実験のように考えているから、かな。