岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
あなた方は、ほどほどということを知らない
原作未読。原作は未読だが、原作者の息遣いと言葉の重みを感じさせる。同じノイタミナということもあってか、全体的な雰囲気が「PSYCHO-PASS サイコパス」と似ている印象。
作品全体の感想は複雑で難解かつグロテスク、そして同時に強いメッセージ性を持った独特の作品。非常に負荷の高い作品で見る人を選び、決して気持ちのいい余韻を残す物語ではない。しかし作品の中に散りばめられた言葉の数々が各々の信念を持ち、言葉を具現化する力強さをもった魅力的な作品でもある。
タイトルが「harmony」ではなく、「<harmony/> 」であることが作品の最後になって明らかになるわけだが、原作未読者にとっては少々解釈が難しい表現構成ではあった。ただその意味がわかった時の感動は衝撃だった。
この作品の中心人物、ミァハ。彼女がこの作品の大きな提言の象徴としての存在であり、また評価の別れるキャラクターでもある。彼女が壮絶な経験を強いられた野蛮で悲惨な外の世界の現実、過度な健康や幸福を押し付けるあまり、かえって息苦しさを感じる中の世界の実情。そんな世界でミァハが全ての人間を一つの個として意識の限界を超え、ハーモニーの世界へと導くという思想は全てではないが個人的に理解できた。とはいえそれは彼女の自己中心的な思想の押し付けでもあるとも捉えられるし、極端な思想であったことも否定できない。誰よりも純粋であったミィハ、誰よりも狂っていたミィハ、彼女をどう評価するかがこの作品全体の評価に繋がると思う。個人的にはミィアの存在や思想はとても興味的で、好意的に受け止めた。
近未来の舞台設定でありながら、現代の豊かであるとされる社会への問題提起や警鐘という意味合いも含んだ、非常に考えさせられる一作。現代社会でも私たちの身の回りにある必要過多のモノやサービスが、かえって私たち人間としての本質的な何かをを押し潰しているのではないか、とふと感じることがある。それを思い出させてくれたのが本作なのかもしれない。
作品の最も印象的なセリフとして、砂漠の民・アサフ
「あなた方は、ほどほどということを知らない」
という言葉が妙に心に染みわたる。