不如帰 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
新しいビジョンを切り開いたアニメ
題名からもわかる通り落語が主題材になったアニメではありますが、一方で取り巻く人間関係についても癖の強い作品であり、また大正ロマンのような独特な雰囲気まで持った異色作品でもあります。
そしてこのアニメではリアリティのある構築の中にわずかながらファンタジー要素も一部で介入してきます。
多くの場合この手法は失敗することが多いことから昨今のアニメではあまり使われなくなってきたように思いますが、このアニメに関してはその気配が感じられなかったです。
現実的な話と死ぬ間際の世界との擦り合わせを双方で入念に行い、その双方の世界観同士が歩み寄った結果中性的な世界観を一貫したものとして作り上げてきたから違和感を感じなかったのではないかと推測します。
続いて驚いたのは全般的なキャスティングでした。
既に多くの声が上がってますが、ツッコミどころを捻出しようとしても見当たらないくらい完璧な配役でした。
またOPやEDも優秀で、椎名林檎が特にドンピシャだったのにも脱帽するほど。
もうひとつ、落語をノーカットで疲労する場面もありますがあえて落語というとっつきにくい題材を引っ張りだしたにもかかわらず、引き込まれるうえに私のように落語を全く知らない人でもその文化に関心を持たせるビジョンまで提供してくれたことはもはや感激に値する程です。
いまでは古典芸能になりつつある落語ですが、新たな視点を与えてくれたアニメであり、もっと多くの人に観てほしい作品でもあります。
落語の認知度や人間関係に対する賛否など観る人によって捉え方が様々かもしれませんが、私はそういったプロセスが存在することこそが成功の秘訣なんだろうなと感じました。
ありそうでない、そういうアニメです。