oxPGx85958 さんの感想・評価
4.0
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
大人の鑑賞に堪える佳作
本作はコアなアニメ・ファンのコミュニティの外にまで人気が広がった今期のダークホースと捉えられているようです。
私は本作は非常によくできている佳作だと思いました。私から見た本作の美点のいくつかは「アニメっぽくない」というところにあるので、それが広く人気を得た理由だったのかもしれないが、そうではないかもしれません。そこらへんはよくわかりません。
まず最初に、私から見ると、否定的に論じられることの多い3D CDのアニメーションと、「棒読み」と評されることのある演技は、どちらもLo-Fi指向ということで納得できるだけでなく、むしろ気持ちよく受け入れられるものでした。
しかし注目すべきなのは、それ以外の脚本、演出、音楽などの要素が、Lo-Fi どころかそうとうに質の高いものだったということです。
本作の脚本は、普通の物語としてもよくできているが、何よりもSFの脚本として優れています。あえてSFというジャンルに言及するのは、アニメをいろいろと見ているなかで、特にSFアニメの脚本の弱さがやけに目につくから。この『けものフレンズ』は、見かけはそんな感じではないのに、(ハードSFとまでは言わないが)本格的なSFの物語として、舞台設定と語りの両方の面でとても満足できました。
本作の演出には、普通のアニメにはない洗練を随所に感じました。このことは、第一話の、サーバルが地図の入ったボックスの蓋を開けられないところとか、カバとの別れのシーンなどですでにはっきりしていました。
この種の洗練された演出は、日本のアニメ作品ではめったに見られないわけで、そのこと自体、日本のアニメ界でこの種の洗練があまり肯定的に受け入れられていないということを示唆しているんだろうな、とは思います。実際、本作を第一話で見限ったという話をよく見るけれども、上記のようなシーンを見て
「あれっ!?」と思わないのは、この種の洗練に対する感受性がないからなのでしょう。それが悪いとかそういうことではなく、そういうマーケットだということです。