戸愚呂(青春) さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
全力疾走、歩けよ乙女
いやこれは、、、
久々ネガティヴレビューになりそうです。
以下、原作との比較+否定的な内容なので注意です!
この作品においては原作厨です。
主観なのは仕様です。
結論から言って、「楽しめなかった」
原作は既読で、四畳半含め同作者の他作品も何作か読んでいます。
よく比較される四畳半とであれば、個人的には夜は短しの方が好き、というか夜は短し自体、かなり特別に好きな作品の1つです。
ちなみに四畳半のアニメは観てません。
どんな作品にも言えますが、原作からの改変自体は勿論あって良いものであると思ってます。
今回のこの作品でも改変はいくつかありました。
ただその改変が重要な要素を削いでしまっていると、どうしても良い印象は受けません。
所々で不満な点がありましたが全てを
具体的に挙げてたらキリがないので、、個人的に許容できないポイントを。
まず全体的を通して、先輩と乙女、それぞれの「想い」というものが全く伝わってこなかったです。
原作は、先斗町での飲み歩き編、古本市編、学園祭編、風邪編、の4章で構成されており、それぞれ春夏秋冬それぞれの一幕を描いています。
1章→ただひたすらに乙女を追い求める
2章→身を削り、乙女の求める絵本を得るために奮闘する。
3章→命をかけて乙女と共演する。
4章→竜巻から乙女を助ける。
とても大まかに書くとこんな感じです。
章を重ねるごとに、先輩の行動に焦点を当てると、活躍が目に見えて大きくなり、それぞれ内容はとてもドタバタしつつも綺麗な流れになっています。
さて、今回の映画ですがどうでしょう。
まず、物語全体が不思議な一夜で起きたことになっています。
(乙女にとっては一夜だった、、のかもしれませんがどちらにせよ)
この点でまず先輩の想いの深さや、行動という面がどうしても薄くなってる気がします。
原作1章にあたる先斗町での飲み歩きですが、先輩が乙女を「探し追い求めている」という描写が圧倒的に不足。
乙女はひたすら夜の街を歩き、先輩は乙女の行方を追い、それぞれ先々で人との関わりがあり、全てが繋がってゆくところに面白さがあるのに、その繋がりも感じる事ができませんでした。
原作を読んでいるので、なんとか補完できますが、原作を知らずに観た方はそれを感じることは難しいでしょう。
原作2章にあたる古本市編、ここでもはやり繋がりに欠けると思いました。
ラタタタムを介した乙女とのやり取りが無くなってしまった点が問題かと。
原作でも直接乙女にラタタタムを直接プレゼントしたというものではありませんが、2章終盤のラタタタムを介したあのやり取りは面白いと思った部分だったし、2人の接点として重要なシーンだと思っているので残念でした。
そして、3章に当たる学園祭編。
個人的に原作を読んでいて最も面白かったと感じたのがこの章でした。
この章でのポイントは何と言ってもパンツ総番長と紀子さんの恋の顛末でしょう。
総番長の恋、韋駄天コタツ、偏屈王の劇、それらの要素が素晴らしく綺麗に繋がって、、、
それを、、、どうしてこうなった?と思わざるを得ないです。
原作の総番長についての話は割愛、先輩と乙女の「想い」という点での問題点を挙げると、
原作では総番長と紀子さんの恋の顛末を見て、乙女と先輩は共に涙し、先輩の涙を見た乙女が「このひとはたいへん良い人だなあ」と思う。
これ、この描写は絶対的に必要であったと思います。
そういった面からも、総番長の恋についての改変にはただただ残念です。
先輩が劇に現れる+この涙とその後のやり取りで乙女の乙女心をグッと引き寄せることができたのでは?
今回の映画では、本当に砕いて言ってしまうと、ただ単に劇で抱きしめられただけで好きになった。そんな印象になります。
ナカメ作戦で意識させていたと思わせるのも難しいでしょう。
原作4章にあたる部分ついて、もはや特に書くこともないですが、原作の4章は今までの1〜3章の集大成の章でした。
書いてきた通り、映画版では先輩、乙女それぞれの「心」が全くこちらに伝わってこない為、特に何も感じず、先輩の脳内会議が雑音に聞こえました。
乙女を救うシーンもただの夢みたいになってしまってるし、、、
あの締めだって、過程があってこそじゃないですか、、、
■まとめ
つらつらと書いてしまいましたが、結局1番許容できなかったのは、先輩と乙女の「想い」が伝わらないという点と、原作での美しい「繋がり」を感じ取れなかったという点でした。
前述した通り、改変はあって良いと思いますが、その改変が人物の「心情」を大幅に削いでしまったり、物語の面白さを欠くのは問題だと思います。
原因としては、2人の接点を無くしたり薄くしたことだと思いますが、それを序盤の「ナカメ作戦」の説明で補完しろと言われても、無理ですよ。
短い時間に納めなくてはならないといのもわかりますが、全体的に走りすぎてた様に感じます。
それもかなり全力で走ってました。
いや、歩けよ乙女。
そのくせ劇はミュージカルで変にテンポ悪くなってる気がしますし、、、なんの劇かもわかりにくいし、、、(というかアレでは劇の内容なんて全くわからん)という具合に、自分が思う核の部分で否定的な印象を抱いてしまうと連鎖的に否定を呼んでしまいます。
映像は独創的で画面映えもしてたと思いますが、、内容がコレでは、、、
ちなみに、原作を全く知らずに観に行った連れの感想は
「面白いつまらない以前によくわからなかった。」
でした。
私個人としては、当然の感想だと思います、、、
そんな人にこそ原作を読んでほしい!
■総番長と紀子さん
{netabare}
割愛とか言いつつ書いてしまう。
ただ、詳しくは原作を!
パンツ総番長は、リンゴが降ったあの時に出会った彼女を想い、パンツを履き替えないという、とんでも野郎です。しかし一途な想いを持っている人物だと思ってました。
映画のアレでは、パンツ総番長の「想い」という面でもとても薄い印象になってしまいます。
「鯉」が頭に当たって新たな「恋」?
それじゃ総番長がただの単純野郎じゃないか!
そりゃなにも美しくないし、当然先輩や乙女も感動しないし、結果的に大事な描写が抜け落ちている。
鯉をここへ持ってきたのはまぁいいとして、そもそも鯉が飛んでいったところもサラッとしていたしもう、、、
大分吐き出したので、
ここいらでやめておきます。
{/netabare}
とにかく、繋がる楽しさと人物の想い!これが薄いから楽しめなかった!