oxPGx85958 さんの感想・評価
2.3
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
内向きコンテンツ販促アニメ
件名のように思ったのは、この作品、何度も見ようとしては断念して放置していたが、思い立ってスマホ用ゲームの『スターライト・ステージ』(いわゆる「デレステ」)に手を出して数ヶ月経ってから改めて見てみたら、なんとか最後まで見通すことができたからです。出てくる楽曲とキャラクター名に馴染みがあるのとないのとでは、見やすさに格段の差があったし、それまで絵と名前でしか知らなかったキャラクターに声と動きがつくと、やっぱりそれなりに楽しいものです。
そうは言っても、ボイス音声を切り、イベントはぜんぶスキップして、「デレステ」を単なる音楽ゲームとして遊んでいる私にとって、本作の作品世界は依然として大きすぎて、全体像を把握できたという自信がありません。ネット上のレビューや議論を見ると、それ以前のゲームや他のコンテンツにも膨大な関連情報があるようで、要するにこのアニメは自己完結していないのです。
そのような作品でも、うまく作られていれば門外漢でも楽しめるものですが、本作はそういうものではありませんでした。
なお、アニメには疎いけれどもアイドルには少しばかり馴染みがある者として言わせてもらうと、本作を作った人たちは、アイドルにあんまり関心がないんじゃないかと思いました。本作の核となる大きな物語は、別にアイドルでなくても、集団で行うスポーツとかパフォーミング・アーツなどに移植可能な「群像もの」の物語で、アイドルに固有の要素が薄い。
本作では最後まで、シンデレラ・プロジェクトという集団、その中の各グループ、そして個々のキャラクターがアイドルとしてどんな位置づけにあるのかがよくわかりませんでした。わからないから、各キャラクターが直面する試練の意味合いもよくわからず、多くのプロットが説得力を備えていなかった。
本作はまた、「パフォーミング・アーツの映像化の問題」にもろに直面しています。本作に登場するアイドルたちのパフォーマンスのシーンは、そのほとんどが、「作画がうまく行われているかどうか」という点で論じることは可能でも、物語の中でのそのパフォーマンスの位置づけが描かれることはない。それだけの精度が映像にないから。
大きな物語の核に「笑顔」とか「前に進む」みたいな抽象的な概念を置くことになったのは、これが理由だったのではないかと想像しています。
これを野球を扱うアニメに置き換えれば、ピッチングやバッティングの技術を論じず、そのチームがどれほど強いのかを描くこともなく、努力と根性をキーワードに、登場人物たちの人間関係ばかりを描写しているようなものです。
もう一つ重大なものが抜け落ちていると感じたのは、観客・ファン・消費者の描写でした。こうなったのは作り手がアイドルの消費者ではないからかもしれないし、元がゲーム・コンテンツであるということから生じた制約のせいかもしれません。後者のメタ的な要因は、このアニメを他の点でもいろいろと不自由にしているようです。
なお、主人公(!?)の島村卯月を演じる大橋彩香の終盤での演技は非常に良かった。また、大きな物語はともかく、個々のキャラクターを紹介するエピソードでの小さな物語にはよくできたものもありました。
最後に、これは元のゲームにも言えることですが、英語ができないなら使わないようにした方がよろしい。