じぇりー さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.0
作画 : 2.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
賛否両論バッチ来い!争い事は私が魔法で全部粉々にしてやるわ!
中世・百年戦争時代のフランスを舞台に、争い事が嫌いな主人公・魔女マリアの奮闘を描く作品。
こういった時代物が好物なので視聴したが、本作での魔女が、いわゆる中世で忌み嫌われていたリアルな「魔女」とは違い、ほうきに乗って空を飛び・ビーム的なものを出したり・魔物を召喚したりと、アニメではよくあるタイプのファンタジックな魔女だった。
純潔、つまり処女であり、かつ聖母マリアと同じ名を持ちつつも魔女、という異端な存在でありながらも、どこかピュアさを持ち合わせる主人公。
だがこれが、岩のように自分の信念を曲げない頑固者なのである。
これまで色々な作品を見てきて、主人公というのは大抵、ストーリーの進行と同時に悩み・葛藤し、気付き、成長するのが専らのスタイルだと思ってきた私にとっては、かなり珍しいタイプである。
では、この作品においてマリアはそれで良かったのか、というのが、私が抱いた最大の疑問である。
戦争を肯定する気は全くないが、百年も続き平和を知らない人々が争いと隣り合わせの生活を送り続ける世にあって、戦いの中でしか生きる術を知らない貴族・兵士・傭兵たちからすれば、毎度戦いの邪魔をするマリアは自分たちの営みの邪魔をする存在でしかない。
いくら強大な魔法が使えるからと言っても、マリアが戦争に介入し無理やり争いを止めることができるのは、自分の目の届く範囲の中でだけ。
彼女の行いは、百年戦争そのものを終結させる力は持たない。せいぜい近所の小競り合いを止める程度。
結果、争いは決着がつかずに終わり、戦争そのものを長引かせる要因にすらなっているような気さえする。
それでも頑なにマリアは主張する:「私は、目の前で人が争うのを見るのが嫌いなの」
それはもう、完全に自己満足のための行為であると言い切っているようなものではないのか。
神や天使は、人の世の理に手出しをしない。要するに「見てるだけ~」で、地上の教会もこれを全知全能の父の尊い御心だと崇める。そしてマリアはそんな神と教会を否定し、堂々と喧嘩を売る。
これには賛否両論あるだろう。戦争は絶対的にいけない事で、人間の行いは往々にして愚かであるという大前提をもってしても、マリアの行いは正しいと言い切れるのか。
本作でも度々言及されているように、天上の神にだって本来争いを止める力はあるはずなのである。しかし何もしない。どころか、争いに介入するマリアには裁きを下そうとする。果たしてそれが「間違い」なのか?
こういう点が非常に考えさせられるように作られているという面においては、何気に哲学的で重いテーマを背負った作品である。
とはいえ、序盤はマリアが処女であるという設定を如何なく弄った下ネタギャグシーンが多いので、作品全体のタッチとしてはそこまで重厚感はない。
この作品への解釈で仮に視聴者たちの間で論争が起きるようなことがあったとしたら、それはマリアにとっては本意ではなかろう。
そして、結局うやむやになるのだ…何が「正しく」て、何が「間違って」いるのかも。