101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
楽屋裏の大脱線♪
原作コミックは未読。
アニメ版『落語心中』にて、寄席を再現した声優さんスゲー!
と私が思ったり、そういう感想を見る度、
いや……待て!『じょしらく』を忘れてもらっては困る!!といった感じで、
“落語ブーム”の傍ら、最近、個人的にやたら思い出すことの多かった、日常系ギャグアニメ。
ほんのちょっぴりだけど寄席もアフレコしてるんだぞーー!
落語家役の五人自身がOP曲まで歌ってるんだぞーー!
といった感じで、ついつい存在を誇示したくなりますw
江戸時代の大衆娯楽である落語には、元来、
笑いで軽くなった足で、タブーに踏み込む一面もあります。
士農工商の頂点である武士や“関白”として君臨する亭主も、
噺家(はなしか)の舌鋒にかかれば笑い飛ばされて形無しw
本作の楽屋裏トーク等は土台は萌えギャグ漫画らしい、ゆるい日常会話。
ところが落語ムードから下ネタや毒舌をオブラートで包む免罪体質や、
安々と禁止区域に踏み込むフットワークの軽さを拝借した?
この女子落語家たちは何気ない会話から脈絡もなくブラックゾーンに突入w
そのポテンシャルが遺憾なく発揮されたのは第四席でしょうか。
{netabare}乳首を求めて女を追いかけ回す“北”の“あの方”が、
うっかり父上?の乳首をポチッとして乳首弾道弾ミサイルを発射するシーンでしょうw
“北”と言えば、小泉訪朝辺りまでは、上から目線のマスコミが、
世界で唯一、正式名称で敬称していた、この島国の大きなメディアタブーの一つ。
芸能界でも自国の権力者やアメリカ大統領はバラエティやモノマネで茶化しても、
“北”のあの方だけはネタにしてはならないムードが立ち籠めている……。
そこをノーモーションで踏み込んで来るのが“JSRK”の恐ろしさw{/netabare}
じゃあ右寄りでタカ派なのか?と言えばそうではないと思います。
第一席では、{netabare}列島周囲の隣国に領土や人や技術の返還を要求したりしますがw
自国の体制にもしっかりと毒を吐く。
“北”に匹敵するメディアタブーである宗教法人もシュールにネタ化する。
萌え顔で漫画アニメ業界の裏事情を斬り伏せ、
コミケに集うオタクたちにも冷徹な視線を突き刺す自虐行為も披露。{/netabare}
むしろ、あらゆる事象を分け隔てなくネタにする、
とってもフェアな方たちなのだと思います。
どちらかと言えば、ネタに出来ない程、ひいきにするゾーンが多い方々のほうが、
余程偏っていると私は思います。
何より1クール回った時、いつの間にか東京各地の下町情緒等を再発見できる構成は、
平和で素朴な精神がないと再現できないと思います。
トークが荒れるほど垣間見えるオマージュネタが、
マニアックかつ時に微妙に古いのが渋くて、みぞおちに食い込みます(笑)
{netabare} この種の日常系でしばしば勃発する、犬か?猫か?の論争が脱線し、
古の暴走猫軍団『なめんなよ』と奇跡の再会を果たした時は、
感動の笑いがこみ上げて参りましたw{/netabare}
当時は落語と合せて懐古成分も売りなのか?とも思っていましたが、
本作放送から数年経て、落語ブームが話題になったり、
バブル再評価の生温かい風が吹いて来たり
({netabare} なめ猫も昨年ワイモバでCM出演を果たしましたしw{/netabare})
こうした最近の社会情勢を見ると『じょしらく』は
ブームを先取りした進歩しすぎた作品だったのか?
と思ってみたりもしますw
右か左か、タカかハトか、古いのか新しいのか、
萌えに媚びているのか、萌えを馬鹿にしているのか、
フリーダム過ぎて捕まえられない壮大なスケールw
ただ一つ、真ん中だけはないことは確かw
原作は既に完結済みで続編アニメ等は望めませんが、
あの五人の毒舌娘が今の世の中をどう笑い飛ばすかには興味がありますw
今だと{netabare}“北”のあの方を“黒電話”等に絡めてネタにして、
ナントカスピーチとか言われたりするのでしょうかw
いや……流石に、この緊迫した情勢化で“北”ネタは洒落にならないか……。
世の無常を表現したりして、武士の死生観を支えたりもした、
能楽などの伝統舞台芸能とは異なり、落語は太平の世に育まれた大衆芸能。
さしもの落語家も戦までネタにするのは不得手ということか……。{/netabare}