岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
文字通り、「夜は短し歩けよ乙女」
原作既読。森見先生の原作「四畳半神話大系」のスタッフが再結集して、製作されたのが本作「夜は短し歩けよ乙女」。「四畳半神話大系」はこれまで見てきてアニメの中でも個人的に3本の指に入るくらい好きな作品で、また森見先生の作品の中でも一番好きなのが、「夜は短し歩けよ乙女」。となるとこれは期待せずにはいられないと劇場にて鑑賞。
今回の劇場版は原作の大まかな流れは踏襲しつつも、様々なアレンジも加えられている。最も大きかったのが、原作では一年で描かれていたお話を、本作では一夜で一気にまとめあげたこと。そのため息つく暇もなく場面が展開され、その度色々なキャラクターが入り混じり、妄想愉快な作品になっている。この改変は原作ファンとしては少し複雑で、確かに一夜のお話にするとしっくりくる部分もあるが、代わりに色々と省かれてしまった部分も多く・・・。やはり原作ではその季節ごとのそのエピソードだから感じる楽しさや趣があったので。脚本的に難しい注文ではあるとは思いますが。
もう一点の改編としては原作よりも「先輩」の出番がかなり減っており、乙女が主人公感が強まっていたこと。こちらは乙女が楽しいキャラで、乙女役の花澤さんのかわいらしく、たくましいお芝居もあって乙女の魅力が最大限生かされていた。先輩にも見せ場はあり、物語のラスト、外堀を埋めてばかりだった先輩が葛藤し、最終的に彼女への一歩を踏み出すシーン。そして最後の喫茶店の場面は丁寧に描いてくれていたので嬉しかった。また乙女と李白の人生や時間に対する価値観の対比が原作よりも強調されていて、そこに「一度きりの人生をみんなで楽しもう!」という気持ちが込められていたのかなと感じた。
どちらにしてもタイトルの「夜は短し歩けよ乙女」通り、黒髪の乙女が長く不思議な一夜を歩いた、という意味でそのままの内容に収まったと思う。
個人的にはアニメ「四畳半神話大系」は原作を超えた名作だったが、劇場版「夜は短し~」は原作を超えることまではできなかったのかな、というのが率直な印象。ただ原作のメッセージやコンセプトは踏襲されていると思うし、映像化が叶っただけでもとても嬉しかったのも事実。原作は原作、アニメはアニメと割り切って見るのが大切だと感じた。