ぱんだまん さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
2期でも払拭できなかった決定的ジレンマ
狸、人、天狗の3種族によるハートフルコメディ「有頂天家族」の続編となる今作。
前作は、かの四畳半神話大系の筆者である森見登美彦の作品が原作ということで注目度は決して低くはなかったが、商業的成功はならず。京都府とのタイアップでどこまで地元の人々を巻き込む新規ファンを獲得ができ、前作の失敗(ギャグとシリアスの区別、キャラの魅せ方)を直せるかが肝となる。
さて、いざ見終わって1期と変われぬ「有頂天」があった。
日常アニメのような雰囲気は見ていて心地よいし、ストーリーやキャラも1期からの積み重なりがあってすんなりと楽しめた。BGMは作品に合っていてハイクオリティーで、作画は京都の町並みを四季を織り交ぜつつ綺麗に写していた。
だが待て、しばし。やっぱりこの作品には何かが足りない。
試しにもう一度今作の1話を見てみると、小気味いい矢三郎の語りから始まり答えが見てきた。さらに、Webで公開されている原作の冒頭を読んでみて核心に変わった。
「小説をアニメ化する限界」
原作ありの作品をアニメに変換する際、原作を100 %再現することは不可能だ。それは、情報が変わるから。アニメになると、文字がセリフに切り替わり、場面説明も基本的に背景をはじめとする視覚的情報になる。小説よりも情報量が増える反面、原作との誤差も生まれやすくなる。もちろん、それがクオリティを上げることもあるが、逆もまたある。そして、それが顕著に表れてしまったのが有頂天家族だ。
アニメの冒頭と終わりにある矢三郎の語り。実に聞いていて心地いいが、原作ではそこかしこに展開されており、読み進める文字からも「有頂天」の雰囲気が存分に感じ取れた。つまり、本来はそれありきの有頂天家族であり、どうしてもアニメでは「阿呆」な文字を変換し切れなかった。そして、これだけで有頂天家族は一気に物足りなくなる。実に繊細な作品だ。
厳しいことを言えば、1期の円盤の売り上げからして2期も売れはずなどなかったし現に売れなかったのが事実。それでも、アニメ化させたPAスタッフの熱意はしっかりと伝わった。ツイッターの公式アカウントでも積極的に京都を巻き込み宣伝していた。上では散々ネガティブなことばかり書いたが、おそらくアニメ化される現在執筆中の最終章も私も最後まで付き合おうと思う。さしずめ「阿呆の血のしからしむるところ」と言ったところか。