カンタダ さんの感想・評価
3.4
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:今観てる
台詞回しに惑わされてはいけない
タイトルどおりだ。恐らく難解なセリフは今後の展開のための伏線だろうから、ここで全部理解しようとしなくてもいいはずだ。あくまでも作風程度のものと理解して、今はいちいちの会話を拾って考える必要はないだろう。
といっても、少々回りくどい言い回しだし、ライトノベルに頻りに見られる論理的思考と述懐には食傷気味だ。もう少し核心だけを突いた簡易なセリフにできないものか。そこは作家の力量に委ねられるところだが、言葉に頼り切り、セリフに伝えたいことを全て乗せようとするのはライトノベル作家の悪い癖だ。
この悪癖を除いて観れば楽しめる作品だろうと予感させる。続けて観ていきたい。
ところで浅井ケイと相麻菫の善と偽善に関して話しているシーンには、興味をそそられた。すこしここで考えてみたい。長文だが、時間のある方はお付き合いいただければ幸いだ。物語の理解の助けになれば嬉しい。{netabare}
さて、善の行為に一点でも不純物、つまり自分のための行為(エゴ)が混ざれば偽善だとする浅井の考え方は相麻が言うように潔癖だ。
単純に利他的行動=善、利己的行動=悪と定義するなら、この世に純粋な善も悪も存在しない。彼の掲げる正義は理想であり、人間には手の届かないものだからアンドロイドの話が出てきたのだろう。
アンドロイドであれば、利己的動機の問題を無視できる完全な利他的行動、つまり善を為すことができる。
主要の3人登場人物のうち、アンドロイドに最も近い人物、つまり完全な利他的行動ができそうなのが春埼美空だが、言うまでもなく彼女はアンドロイドではなく人間だ。しかし感情が極端に希薄で、自分の決めたルールに従うだけのロボット的存在でもある。
だが、ロボット三原則は「人間への安全性」「命令への服従」「自己防衛」であるが、春埼は三番目のルールが「泣いている人を見つけた時にリセットする」という点で違う。
これは一見利他的行動にも見えるが、リセットしたところで未来を変更できないため、悲しむ人を救うことができない。したがって、無意味であるがゆえに非常に人間くさい行動といえる。
そこは浅井もわかっていて、それを助長しようと春埼に働きかける。要するに彼女を理想の善(アンドロイド)から遠ざけ、自己愛を育てて浅井の言うところの偽善者にしようとしているわけだ。
一切自分のためにならない、例えば悲しむ人を見たくないなどの動機が存在しないのならば、だれも救えない。なぜならそんなものは存在しないからだ。
であれば、救済はかならず悪、利己的動機が含まれなければならない。それを偽善とするならば、世界の全ての救済は偽善だ。
しかしそれでどんな問題があるのか。だれも救われない理想の善より、だれも泣かずに済む偽善を選ぶのが自然な人間の感情だろうし、道理だろう。
以上が善と偽善に関する考察だが、こんなことはいちいち考えるまでもなく、人間であれば自然とやっていることだ。
しかし物事を掘り下げて考えるのが物書きの本分だろうから、それはそれでいい。
ただこれをアニメで描くのは難しいから、このような難解なセリフになったのだろう。
{/netabare}