退会済のユーザー さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
自分と重ね合わせた時。
空想でも妄想でもなく、酷く現実的な作品。
実っても実らなくても人は誰かに恋をする。
その記憶は淡く、人によっては甘いものであり、苦いものでもある。
純粋な恋。甘美な恋。残酷な恋。空疎な恋。悪辣な恋。
それぞれがそれぞれの恋を経験する。
陶然として、盲目として、懊悩して、憧憬して、大切に保管した記憶。
この物語を観て、仕舞いこんだ抽斗から取り出された記憶を好きだと言えるだろうか。嫌いだと言えるだろうか。
静謐な世界に降り積もった雪と同じように積もった純粋な気持ち。
いつから大人になったんだろう。いつから子供を卒業したんだろう。
あの時抱いていた気持ちはきっと純粋なものに違いないはずだったのに。
消えたんじゃなくて、きっと忘れてしまったはずのその気持ちを少しだけ思い出させてくれる。
二人の距離が縮まらなかったのは彼が子供のままで、彼女が大人になっただけ。幻想的な恋と現実的な恋が交わらなかっただけなのかもしれない。
自分と重ね合わせた時、思い起こされる記憶は色褪せていて、当時は納得も理解も出来なかったけれど、今ならきっと、ああ、僕は子供だったんだなと美化した記憶を慈しむ事が出来る。
分かってる。ああ、分かってるよ。その記憶は縋る為のものじゃなくて、糧にするものだって。
視聴後に訪れた空虚感を埋める為に取り出した記憶は僕にとって大切なものだったと今なら言えるかもしれない。