じょー さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
生贄の王子とたった一人だけ彼を信じた女の子
この国を良くするにはどうすれば良いのかという命題に対して、人としての良識と、国を変えんとする革命と真に優先すべきものはどちらであるのか?それぞれのセレソンに与えられた、100億の資金とノブレス・オブリージュ=高貴なる責任。持つ者が果たすべき責任は何か、そしてどういう方法で果たすべきなのかを、滝沢朗という魅力溢れるキャラクターを通じて、考えさせられる良作。
森美咲という、持たざる者の代表である一人の女の子の視点から、眺める愛情と哲学の物語であったと感じました。
監督は攻殻SACの神山健治、キャラデザは「ハチクロ」「三月のライオン」の羽海野チカでも話題を集めました。羽海野さんらしい、ヒロイン咲の造形と、早見さんの澄んだ声とが良くあっていたと思います。
各話に有名な映画のシーンのオマージュ、題名に曲名、書名の破片がちりばめられており、これを探すのも楽しかったですね
1話「タクシードライバー」2話「ティファニーで朝食を」3話「グランブルー」4話「さらば青春の光」7話「インソムニア」「Xメン」9話「椿三十郎」10話「エデンの東」11話「明日に向かって撃て」
これ以外にもあったと思いますが、5話と6話が分かりません。だれか知ってる人いたら教えてください。
佐野元春さんの曲とも関連性が高いですね。4話題名の「リアルな現実、虚構の現実」はELECTRIC GARDENの「リアルな現実、本気の現実」、最後のゴールデンリングの下りは、神山監督の好きだと言われるサリンジャーからの引用を用いた「ロックンロールナイト」の歌詞「瓦礫の中のゴールデンリング」、題名がそのものずばりのスウィート 16から「ミスターアウトサイド」。
OPは非常にこってました。ところどころにちりばめられた、各話でのシーンや、ノブレス携帯の接触履歴や消えるNoで、話の進み具合がわかったり、12番がサポーターである事を暗示したり、
The King has come! To lighten up our feet
The King has come! With justice till the end
The King has come! To save us from the dark
Who could ever doubt? We have faith
途中ででてくるこの言葉も皮肉が効いていました
ラストシーンが非常に印象的でした。ゴールデンリングがなかった、すなわちもう一度メリーゴーランドに乗ることが出来なかったの意味するところは、この信じてくれた女の子との別れでそのあとに、王様になる依頼と最後の依頼をして、携帯を咲のポケットに落とし、最後のセリフにつながります。
――彼はこうして王子になった。王様のいない、この国で
このセリフは、物語の最初のセリフ
――彼は仕方なく王子になった
――少なくとも、私たちの希望する明日は、誰かが王子という名の生贄(いけにえ)になることでしかやって来ないと気づいていたから
――だから彼は、不本意ながらも王子であろうとした
――この王様のいない世界で
との対比が非常に効果的だったと思います
まだ劇場版は見ていませんので、テレビシリーズのみの感想です。たくさんの謎を回収せずに、「続きは劇場版で」しかも2作。で進む手法や、プロットの回収の仕方の雑さには不満が残りますが、メッセージがはっきりと示しており、楽しめました