「小林さんちのメイドラゴン(TVアニメ動画)」

総合得点
93.9
感想・評価
1708
棚に入れた
8218
ランキング
10
★★★★☆ 3.9 (1708)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

kurosuke40 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

なんで私一人なんだろうな

原作未読

寄る辺がない寂しさにちょっとした居場所を与えてくれる心地良さ。
トールの視点からも、小林さんの視点からも楽しめる作品でした。

心優しく同時に心寂しいドラゴンのトール。
飲みニケーションを経て、小林さんちにメイドとして住み込み、生活の暖かさに触れていく。
ドタバタと日々を過ごしていく中、不器用だけど心の機敏に敏感な小林さん(マジイケメン)に心を癒されつつ、小林さんちをかけがえない自身の居場所として確立していく。
例え将来小林さんと死別れする運命であり、そしてその結果人と対立して生きていく元の生き方に戻れないと悟っていても、今このときの喜びを取ることを決意する。将来後悔することになっても、今を後悔して生きたくない。そんな赤チェックの似合う明るいドラゴンの寂しさが埋まっていく話。

小林さんから見ると、トールの自立かな。
人間社会を知らないトールが徐々に物事を着実にこなすようになっていき、
最終的には小林さんからの助言なしに、演劇の依頼までこなせるようになっていく。
小林さんは最初から事細かく指示するタイプじゃないけど、ちゃんと信頼して物事を任していて、それに答えるようにトールも成長していく。
トール父に「トールを信じろ」と胸を張って言えたのは、そんなトールの姿を見てきたからでしょうね。

あと小林さん視点からはお金の話。
お金は稼ぐより使うのが難しい、という言葉があって、これは浪費ではなく正しく使うのは難しいということ。
引っ越ししたり、カンナの教育費に使ったりするのは、
本当に将来のことだけを考えれば、資産運用に回した方が良いわけだけど、
今このときを大事にするこの使い方は正しい使い方の1つなんだなと思えた。
(小林さんの稼ぎはわからないけど、ただ昨今の経済状態からすると、そろそろお財布厳しくなるんじゃないかと不安だった。会社が東京で賃貸3LDK?)


あとこの作品の特徴的で素晴らしい点は、小林さんのポジションが女性ということだと思う。
男女の駆け引きを排除して、異種間のコミュニケーションに焦点を当てたのと同時に家族というものに別視点から照らしてくれたように思う。
ぶっちゃけトールはメイドという立ち位置ではあるものの、仕事の距離感ではなく、完全に家族の距離感で、小林さんちの一員だ。
一般的な役割で言うと小林さんは父で、トールは母で、カンナは娘に近いが、内実は小林さんは人間女性だし、トールはドラゴン女性だし、カンナもドラゴン女性(養子?)で、普通の家族構成ではない。でもそんなことどうでもいいのだ。トールやカンナ、小林さんが受けた心の平穏にとって、大事なのはお互いの関係と距離間のなかにあって、相手と自分の種族とか性別とかは関係ない。小林さんちは家族だけど、普通の家族ではない。家族の形はそれぞれで、それでいいんだとしっかり思える作品でした。
伴って、米最高裁の同性婚判決文を思い出しました。小林さんちは同棲レベルで結婚はまた別の話で、することはないだろうけど、根柢は一緒だと思う。
「結婚ほど深遠な人と人との結びつきはない。それは結婚が愛、忠節、献身、自己犠牲、そして家族のもっとも崇高な理想を体現するからだ。婚姻関係を結んだふたりの人間は、ひとりでいたころのじぶんとはちがう、ずっと大きな存在になることができる。そして、本件原告の何名かが身をもって示しているように、結婚は死を超えてもなお続きうる愛情をはらむものでもある。同性婚を訴えるこれらの男性や女性が結婚制度を軽視しているというのは誤っている。むしろ逆だ。彼らは結婚に対して敬愛の念をもっている、みずからそれを実現したいと願うほどの、深い敬意の念を。彼らの希望は、文明社会のもっとも古い制度からしめだされ、孤独で生きることを余儀なくされないことにある。彼らは、法の前で等しく尊厳を認められることを求めている。わが合衆国憲法は、彼らにその権利を保障している。
 第六区巡回控訴裁判所の判決を破棄する。」
引用:http://blogos.com/article/119697/

ご精読ありがとうございました。

追記
原作を読んで
ああ、京アニの脚本凄いわ。シリーズ構成の方が凄いのかどうかわからんけど。
元々短めの原作の中で、物語の持つ多面性を十二分に引き延ばしている。
ユーフォ(一期)の時も感じたけど、原作の物語の下地を壊すことなく、いくつかの視点への言及が示されている。
優秀な物語というものは元々いろんな視点から見れるものなのだけど、元々ある視点の色が濃い原作を多面的に解釈して見せているというか。今回は小林さん視点とか。まさしく原作の延長という脚本に思える。

あと原作も原作で、 {netabare}小林さんが男性だったらというこの作品としては正当で薄い本的な思考実験をちゃんとしていて笑った。 {/netabare}まぁやっぱり難しいところがあるもんだな。

蛇足
{netabare}向こう側の食べ物を食べる食べないは一種の儀式であって、小林さんの距離が縮まったときに、トールが食べさせたのは「あらあら」でしたね。
でもしっぽを頑なに食べないのはなんでだろう。上下の関係じゃないからでしょうか?

咄嗟の親愛の情の示し方はドラゴンで、鼻先をこすり合ったり、舐めたり。
こういう習性は原始的かもしれないけど、愛らしいですね。

キャラと柄がとても似合っている。選択のセンス半端ない。
特にトールの赤チェック良いですね。

あとカンナ「それな」のスタンプ欲しい……。{/netabare}

投稿 : 2017/04/10
閲覧 : 346
サンキュー:

17

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