どらむろ さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 2.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
庵野監督による実験的な恋愛アニメ。面白い事は面白いのですが、良作とは言い難いです。でも名作。
「花とゆめ」の少女漫画原作のラブコメ。通称「カレカノ」全26話。
自分を偽ってきた優等生の少年少女が、少しずつ自分らしさを取り戻していく過程で、互いに意識していく…
「新世紀エヴァンゲリオン」で名を馳せた庵野秀明監督が、エヴァ後に最初に取り組んだアニメで、エヴァっぽい実験的な表現が持ち味でしょうか。
メインヒロイン(実質、主人公)宮沢雪野ちゃんのキャラクターが印象的で、人気少女漫画らしい面白味十分です。
…ただ、中盤以降はやたら総集編だらけだったり、話の軸がブレてたりと、完成度は微妙。
それでも、数値以上に面白い事は確かです。
後世の作品だと「となりの怪物くん」と少し似ているような。
あと「政宗くんのリベンジ」…
{netabare}『物語』
一見、文武両道才色兼備な完璧美少女・宮沢雪野であったが…
実は努力の動機はひたすらに他人から注目されて褒められたいという虚栄心の塊であった!
そんな雪野が、自分を上回る完璧美少年・有馬総一郎にお株を奪われてしまう。
対抗心燃やしたり意識していく雪野ちゃんであったが、ある日、有馬もまた猫かぶっていたと知って…
こういう設定、割と少女漫画の王道の一つなんでしょうか。
強烈な性格の主人公(ヒロイン)の内面描写中心で、ふたりの関係や心情が動いていくのが面白いです。
ふたりとも理性派というか、当面は恋よりも、自分の揺れ動く感情を何とか理詰めで理解しようと足掻く感じが面白い。
あんまりラブコメっぽくない、でも、いつの間にかふたりが惹かれていく。
全般にコメディー調で、雪野ちゃんの性格や周囲の良キャラ(特に雪野の両親)も相まって、イジメ展開や、有馬の結構重い事情も暗くなり過ぎずに明るくパワフルに乗り越えていく感じも快い。
前半の方がふたりの心情や関係の変化に目が離せず、エキサイティングな面白さあり。
後半は、やたらとモノローグ形式の総集編多用されてテンポガタ落ちに。
庵野監督の実験的な描写を楽しめれば良いのですが、これだったら紙芝居やドラマCDでも良いなぁと思った。
後半も雪野と有馬の関係は丁寧に進行していくので見応えはあるのですが、いまいち盛り上がる前に総集編や他キャラの話に移行してしまう感じ。
芝姫つばさちゃん回や、十波くん&佐倉ちゃん回の方が、素直にラブコメの波動を感じられて好きでした。
20話辺りはまさに「十波くんのリベンジ」
2017年冬アニメ「政宗くんのリベンジ」を彷彿とする設定と展開でビックリ。
(無論本作が大先輩、丁度GYAO!で並行視聴していたのでタイムリーでした。20話観るまで、政宗君展開は全く失念していた)
もしかしたら少女漫画だと割と王道なのかも?(政宗君は少女漫画ではないけれど)
十波くんと佐倉ちゃんのラブコメの方が、エンタメ的には一番良かったかも。
雪野ちゃん、脇役に回って十波くんにちょっかい出してる方が輝いているw
終盤は総集編だらけでイマイチ。
最終話は悪くない落としどころなんですが、あまりカタルシスは無いです。
総じて…
1クールに圧縮して密度上げた方が良かったような。2クール視聴するのはやや辛かった。
構成は原作に忠実との事ですが、漫画とアニメはメディアが違う。
庵野演出も2クールかつ総集編だらけでは飽きがちですし、無為に間延びする弊害が大きかった。
…それでも、前半は非常にエキサイティングだったり、後半はサブキャラの話が面白かったり、独特かつ丁寧な心情描写は捨て難いです。
悩み多き割には作風が明るいのも魅力。
「良作とは言えないが、名作には違いない」です。
久々に観て良かった。
『作画』
キャラデザが美少女美少年に見えないのが難。有馬くん、モブに見える。
ラブコメなんだから、ビジュアルは良いに越したことはない。
雪野ちゃん、ピンポイントで可愛く見えるシーンはあるんですが…
ギャグ時の崩しは悪くない。
本作の見所な庵野演出、パロディーや漫画紙芝居は、くどくてイマイチでした。
フリクリみたいな短編ならともかく、2クールだと厳しい。
『声優』
監督の意向で初出演多く、全般に拙い感じ。
本作が初主演で後の人気声優多数。
榎本温子さんのデビュー作、宮沢雪野のイメージには合ってました。
鈴木千尋さんのデビュー作でもあり、やや拙いけれど有馬のイメージは合っている。
他にもクール系な千葉妙子さんもデビュー作。
次回予告を(実写顔出しで)担当した渡邉由紀さんと山本麻里安さんの方が上手かったような。
山本麻里安さんは「ぷちぷりユーシィ」のイメージでした。
『音楽』
ED「夢の中へ」などカバー曲のセンスが良い。
OP「天使のゆびきり」も良曲でした。
『キャラ』
宮沢雪野ちゃん、非常に良い性格してます。性格は悪いが、良い性格してますw
理詰め優等生で「となりの怪物くん」の雫ちゃんと少し似てると思うのですが、雪野ちゃんの方はある意味大雑把で、計算ずくで奔放に生きてる感じ。
イジメもスマートに切り抜けたり、友人相手に少しイジワルしてる時の方が可愛いです。
主役でも脇役でも輝く名主人公でした。
有馬総一郎は結構闇が深かったけれど、あくまでもヒロインポジな印象。
友人たちが軒並み個性的なのが魅力、それぞれメイン張れる逸材揃っていた。
むしろ雪野ちゃんがサブに回る話の方が面白かった程。
十波健史(となみたけふみ)と佐倉椿、政宗君と残虐姫じゃないか…
雪野の妹ちゃん達が無邪気で萌え。もっと出番あれば(25話は花野ちゃん回)
雪野の両親がカッコ良かった。
ノーテンキだが娘を信じて教師にタンカ切る、ステキな親だなぁ。
祖父(父にとっては父)との大人げないケンカも和む。
良き大人がいる作品は良作率高し。(本作とて難は多いが名作){/netabare}