岬ヶ丘 さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
かつて、これほどまで箒に乗れない魔女がいただろうか
物語の舞台は魔法の世界。最近流行のかっこいいライトノベル調魔法ではなく、古典的な王道魔法の設定。「魔女が空を箒を飛ぶなんて、最後にアニメで見たのはいつだったろう。」そういう一種の懐かしさを喚起しながら、映像的には最新のCGを使いながら魅力的な世界観に仕上げている。TRIGGER作品の魅力は、レトロな文化と最新のアイデアをうまく融合させて、幅広い世代が楽しめる新しいアニメーションを創れるところだと思う。これまでのTRIGGER作品に比べて多くの人が楽しめる作りになっている。しかし製作はTRIGGER。各回の演出や物語、キャラクターのセリフにTRIGGERらしい遊ぶ心と情熱が込められているので既存のファンにも楽しめる。
序盤はキャラクターや魔法の世界の舞台設定の説明も兼ねてか、1話完結形式でヒロインのアッコを中心とするドタバタ劇が展開。
メイン3人はキャラクター性がはっきりとしていて、バランスも良く全体的に親近感を感じやすい。各担当回もあり、キャラクターの人物像も掘り下げられている。加えて声優さんのお芝居が素晴らしく、特にヒロイン・アッコ役の潘さんのお芝居は生き生きと表情豊かで、見ているこちらまで楽しくなる。アッコは少々自己中心的な部分もあるキャラクターだが、そのあたりをお芝居で丁寧にまとめあげて、より魅力的なキャラクターにしている。ただそれ以外の生徒にはあまりスポットが当たっていないのが少し残念。その中でもギャグ回もあれば泣けるお話もあり、とにかくバラエティーに富んだ内容。蓋を開けてみないとその回がどんなお話になるのかわからないというドキドキ感がある。1クール目も終盤から、「7つの言の葉」といった壮大な世界観とシャリオの過去が示唆されるようになり、急に物語の味が変わってくる。
2クール目は世界改変魔法やそれに必要な7つの言の葉を集めるという壮大なテーマに話は傾き、新キャラとしてアーシュラの学友だったクロアの登場。個人的にこの2クール目の展開が残念だった。7つ言の葉を集めるという大義名分ができてしまうと、その後の話がどうしても言の葉ありきの予定調和的なものになってしまい展開が読めるのでやや退屈。シャリオ=アーシュラも自分がシャリオであることをなかなか伝えず、クロアの暗躍によってアッコが危険に晒された際も一応フォローはするのだが、常に後手後手で頼りない印象。アッコとアーシュラ、アッコとダイアナと和解する回などはよかったが、全体的にアッコともう一人の主人公的立ち位置のアーシュラの描かれ方が残念だった。クロワを引っ張り続けるよりも、他のキャラクターにも焦点を向けてほしかったかな。
シャリオに憧れるアッコがただシャリオになろうとするのではなく、憧れの一歩先を進みアッコらしい魔女になること。魔法の才能を奪われたアッコが最後まで信じる心を失わず、遂に物語の最後に箒に乗れたこと。この2つの本作の大きなテーマを描いてくれたのはよかったと思う。
2クール目以降やや不満点はあったが、特に最終回のクオリティーは素晴らしくTRIGGERの新しい可能性を見せてくれる作品ではあった。2クール作品は特に脚本が肝心だと思うので、その辺りは少し厳しい評価になったかな。とはいえ全体を通して半年間本当に楽しませてくれた思い出深い作品。
かつて、これほどまで箒に乗れない魔女がいただろうか。
かつて、これほどまで箒に乗ることだけで心揺さぶる魔女がいただろうか。