岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
面白きことは良きことなり!
原作既読。
原作者の森見先生の妄想の庭とも言うべき「京都」を舞台に、狸一家が人間や天狗とともに様々な問題に巻き込まれていくファンタジー色の強い作品。少し重たいシーンもあるけれど、基本的にわちゃわちゃと楽しい物語。森見先生の幻想的な作品は、映像化するならアニメーションが一番だろうなというのは、最近公開の「夜は短し歩けよ乙女」なども同様。
狸が主人公という設定もあり、基本的に狸目線で物語は進む。狸たちが街を闊歩しながら、京都の街並みや人間を描くのが面白い。狸4兄弟や謎の美女・弁天、頑固な赤玉先生など、個性豊かなキャラクターが多く登場する。多くの登場人物は人間ではないが、その内面は非常に人間らしく魅力的であり、また家族愛に溢れていて非常に親しみを持てる。
物語は特に終盤から、主人公たちの父が狸鍋にされた真実と偽衛門選挙が始まる折に、矢二郎が蛙になり井戸に籠った理由や、叔父との因縁が明らかになっていく。父の死に弁天も関わっていたり、亡き父と赤玉先生との最期の会話も印象的。父の死という少し重たい過去ではあるものの、森見節をはじめとする森見ワールドの魅力もあって、なんだか軽快に楽しく鑑賞できるのが不思議。
個人的に好きなのが、やはり矢三郎と弁天の関係性や会話。矢三郎にとって弁天は父の敵ともいえる存在であるけれども、矢三郎は弁天に複雑な感情を持ち続けている。弁天は人物像をあまり掘り下げられることはなかったが、それがかえって弁天の魅力を強めた感がある。また矢三郎と元許嫁の海星が、作中では最後まで面識がないまま終わる(海星のビジュアルは登場する)関係性も面白い。井戸に籠る矢三郎の秘めた思いも涙を誘う。
とにかく物語全編通して、矢三郎役の櫻井さんの優しく穏やかな声色から発せられる森見節が実に耳に心地よかった。狸らの言葉の一つ一つが自然に耳に馴染み、何だか狸に人生を教えてもらっている不思議な作品。
舞台背景も非常に美しく、作品を見ていると思わず京都に行きたくなってしまう。京都という街の魅力を背景で表現するのは大変だったと思うが、特に夜の京都の灯りはとても幻想的な風景だった。音楽もOPは作品に寄り添った勢いのある曲調で、EDはしっとりと聞き入ってしまう良曲。
2期もはじまるとのことだが、アニメの放送局外なのでリアルタイムで見れそうになく残念。パッケージ版をゆっくり待ちます。