めいろ* さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
さよなら、あたしの一番大事な人。
本作品のレビューを綴る前に、著者であるヤマグチノボル先生のご冥福を遅れながらお祈りします。
僕は決して古い人間ではないのですが、最近の若者はと減らず口を垂れ流すご老人の方々の気持ちがなんとなくわかってしまいました。
ゼロの使い魔。通称ゼロ使だったり、ゼロ魔だったり。
僕はゼロ使って呼んでましたし、今もそう呼んでいます。
最近のユーモア溢れる、時代に乗った創作作品に埋もれて、現在を作り上げてきた過去の作品が取り上げられないことをなんだかもどかしく思っています。
そもそも本作品に限って言えば過去の作品ですらなく、まさしく現代の作品なわけですが、なんだか浸透しない、それをやはりもどかしく思うのです。
というのは、なんだか身近にいる友人から本作品の批評を聞かせられて、もちろんそういう意見があるにはあるだろうと思いながら、聞けば全く本作品の本質を捉えていないのです。
本作品、ゼロの使い魔の本質って、どこにあるんでしょうか。
そもそも、本作品がどんな作品かと問われれば、それを単語で表すとするなら、ほぼ全員がこの答を出すと思います。
ツンデレ。
じゃあこれが本質かと言うと、どうでしょうか。
実際、本質がもしどこか他のところにあったとしても、ツンデレが独り歩きしていて、これ以外の感想が思いつかないのも致し方ない。
これが本質なのだとしたら、余りにも薄っぺらいのではないか。
しかし僕はこう思います。これが本質なんじゃないかと。
題名に回帰します。
「さよなら、あたしの一番大事な人。」
{netabare}
ここから重要なネタバレがあります。
知りたくない人は戻ってください。
題名に回帰しておいて早速その回帰を無下にするのですが、主人公である才人とヒロインのルイズは最後、結婚します。
色々なすれ違いがあって、いつだって素直になれないルイズといつだって優柔不断な才人は非常に相性が悪かったと思います。
想いが伝わったり、伝わらなかったりという状態が4期分も続いて、初めて最後に結婚という形で収束したのです。
なんとも思いを伝えたいのに、伝わってほしいのに、という測るに堪えない感情をここまで続けて、想いがやっと、最後の最後に叶った時のルイズの笑顔を、僕は一生忘れないと思います。
アニメには何故か入りませんでしたが、ルイズの想いの強さって、尋常じゃないものだったことを示すところが、題名の部分です。
「…お前、今日なんであんなに俺に笑顔を見せたんだ?」
「だめ?」
「おかしいよ!お前、俺と一年もいっしょにいたのに、
二回しか笑顔を見せてねぇんだぞ!
それなのに、今日は七十二回も笑いやがった!おかしいよ!」
「数えてくれたのね。すごく嬉しい。ありがとう。
だから、一生分、笑ったの。一年に二回。
あんたとこれから、ずっといっしょにいたとして、三十年。
いや、四十年かな?五十年だったらいいわね……。
そのときに魅せるであろう、わたしの笑顔の回数。
わたしね、もう、一生笑わない。一生、誰も愛さない。
でもあんたはだめ。
誰かを好きになって、わたしにしてくれたみたいに、
その子を守ってあげて。あんたの世界で。」
「さよなら、わたしの優しい人。さよなら、わたしの騎士。」
「さよなら。わたしの世界で一番大事な人」
才人って、異世界から来た住人なんです。
現在は割と主流ですが、その当時は珍しかったですね。
元いた世界は、才人がいなくなってからしばらく経って、その間ずっと、その世界にいる才人の母親や友人たちからメールが届いている事を才人とルイズは知りました。
それを見たルイズは、才人は元の世界に戻って暮らすことが最も彼の為になると考えて、上記件のシーンです。
これらのシーンを経て、結婚という結果をもってして、本作品は閉じました。
{/netabare}
ツンデレという本質は、秘めたる思いだと思います。
伝えたくて仕方のない事も、伝えられずに、燻らせて、それが空回りして、それを繰り返して。
なかなか大切な想いって、伝えられない事だと思います。
僕にしても、結婚してから妻に愛してると言ったことはないでしょう。
そんな想いを、最初から最後まで秘め続けて、閉じた本作品を、僕は当時も、今だって、名作だと思っています。
もっと才人と、ルイズを見てほしい。
そこには僕も知らないもっとたくさんの愛が、溢れているはずだから。