kt さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ただの「面白い」アニメではない
泣きゲーの第一人者である麻枝准が原作ということで、やはり泣かせどころでは胸を揺さぶってくる。具体的には、9話の音無の生前の後悔の理由、10話のユイの夢と日向の覚悟、最終話の卒業式、と序盤から少しずつ盛り上げていって、最後に大きな山場を持ってきていたように感じた。泣かせどころの合間合間にも、青春の甘酸っぱさを感じさせる。
「毎日が文化祭みたいで、楽しかったなぁ」というガルデモのメンバーのセリフがある。報われない前世を歩んできた彼女たちが、死後の世界で心から信頼できる仲間たちと出会い、バンドを組み、演奏を重ねるごとに絆を強固なものにしていって、心を満たされて成仏していく。死後の世界での彼女たちの生活は、この一言に集約されていると感じてならない。彼女たちの姿から、自分の姿がフラッシュバックし、昔の思い出が揺り動かされて、懐かしい気持ちにも慣れた。
それと同時に「あなたは今真剣に生きているか?」という問いも発せられているように感じた。死後の世界の彼らは、生前の後悔を抱えつつも、当たり前を嫌って運命にあらがった。生きるということに対する意志の強さ、そして、その意志を強く持って運命に抵抗し続けたからこそ、彼らの願いはかなえられて、無事に元の世界へと旅立つことができた。
死んだ世界戦線と対比的にとらえられているのが、死んだあとの世界の住人である学生だ。彼らは死んだ世界戦線のメンバーと違い、与えられた人生を歩んでいる。それが幸か不幸か、死んだあとの世界に彼らをつなぎとめている。
このことに僕は、必死に生きることの大切さが隠れている気がしてならない。自発的に生きる。流されるのではなく自分から道を見つけて進んでいく。「楽な道を歩むこと」と「曲がりくねった道の歩むこと」が死んだ世界戦線とそれ以外とで分けられている、という印象を受けた。
死後の世界で報われて成仏していく彼らの姿を見て、悲しさとともに安堵を感じた。それはいつまでも過去にとらわれることなく、自らの力で過去の鎖を引きちぎって飛び立てていけたことに対する安堵だろうと思う。
この作品にはほかにもさまざまなメッセージが隠されていると思う。作品を「楽しむ」のではなく細かいところまで「味わう」。Angel Beats! はアニメの作品だけにとどまらず、物語に隠された魅力も感じられる作品に仕上がっている。