雀犬 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
初恋の呪い
萌えエロアニメ、恋愛ファンタジー、青春振り返りもの。
色んな見方をすることができます。
観る人の数だけ違う感想があり、レビューを読むのが楽しいアニメでもあります。
テーマはもちろん恋愛なのですが、万人向けではない作品です。
なんせ主人公の二人が受け身で流されやすい性格なので
周りに引っ張られる形で物語はダラダラと進んで行きます。
お互い年上の人を好きになり、
叶いそうもない恋の辛さに耐えきれないので二人で「クズごっこ」
をやってみたけれど結局行き詰まりを感じて特攻してみたら
案の定玉砕して、そしてお互い次こそは、と誓う。
クズの本懐の大まかなストーリーはこんな感じです。
あまり話に起伏がなくて、エロシーン以外の見せ場は少な目。
全然ドロドロしてないし、登場人物がすごいクズというわけでもない。
タイトルのインパクトからすると物足りなさを感じるかもしれません。
*** 青春の黒歴史 ***
このアニメは振り返りものとして見るととっつきやすいかと思います。
花火と麦は美男美女でありながら、少し残念な主人公です。
この作品、やたらとモノローグ表現が多いのが特徴のひとつ。
たぶん作者的には人物の掘り下げに使っていると思うのですが
なんだかメンヘラっぽくて、二人の痛々しい印象が強くなります。
でも大人の方なら、この痛々しさにある種の懐かしさを憶えないでしょうか。
アニメの青春といえば、学校の屋上で友達と仲良くお弁当を食べたり、
幼馴染みの子と恋に落ちたり、インターハイを目指して汗を流したりと
人生で一番輝いている時のように描かれるのが常です。
でも本当の記憶にある青春は、キラキラした思い出ばかりではないと思います。
思春期ともなれば好きな子を思って布団の中で悶えたり、痛いポエムを作ったりと
人それぞれ黒歴史があると思うのです。みんな言わないけどね・・・
初恋だって叶わなかったという人がほとんどでしょう。
このアニメの最後に2人は「お互いに本物を探すため」という理由で決別を選択します。
ぶっちゃけ、普通に恋人として新しい関係を築いたほうが良いに決まっています。
特に花火は作中で何度も麦に心が揺れていました。
でも失恋の心の痛手が自分を縛り付けるくびきとなり、自由に恋を楽しむことができない。
こんな経験にも心当たりがある人はいるのではないでしょうか。
青春の苦い思い出を掘り起こし、懐かしむツールとしてはよくできたアニメと思います。
ただ、茜先生と鐘井先生のキャラが強烈すぎて多くの視聴者は
終盤になる頃には花火と麦に興味がなくなってしまったのではないだろうか。
ちょっと登場人物のバランスに難があったような感じもしますね。
*** 美男美女の物語 ***
さて、ここまでが前に書いたレビューなのですが別の視点でも書いてみましょう。
素直に恋愛物として捉えると、若干ハードルが高くなります。
それは本作が美男美女であることが大前提、そうでなけば成り立たない話だからです。
クズの本懐の登場人物はモテる。
その理由が外見の良さであることをハッキリと描いています。ただし性格は良くない。
容姿に恵まれていることと、性格が悪いこと。
それを本人達も自覚しているのが本作の特徴です。
「クズ」といっても周りから「クズ」と思われているのではなく、
この話のキャラクター達は自分自身を「クズ」だと自嘲する。
だけども周りがチヤホヤすることもあって、変われないでいます。
そんな彼らも自分から人を好きになり、ぶつかって恋敗れて、
人の痛みを知ることでようやく変わることができる。
失恋の後の二人はどこか角が取れたように感じられます。
しかし傷ついてもなお、花火と麦のプライドは消えることはありません。
負け犬同士で付き合うなんて不格好な恋を受け入れられないと意地を張る。
最終話、桜の舞う道を行く花火の姿を映して物語は終わります。
道の先が靄がかかったように見えないのは、
あくまで自分が惚れた人と付き合うという決断の先に待っているのが
果たして幸せなのか恋愛地獄なのか分からないことを表現しているように思えます。
二人の選択が正しかったのか、それは観ている私達の恋愛観が決めることなのかもしれない。
…というお話なのですが、このプロットに共感できるのは
現実でモテる人じゃないと厳しくないですか!
知り合いに「観ていて心を乱された」という人がいたんだけど、彼女はかわいくてモテる子だった。
ウワサでは横槍メンゴさんも美人らしいし。
イケメンに生まれなかった僕は残念ながら、誠に残念ながら感情移入できません。
恋愛物としては、ちょっと間口の狭い作品のように思います。
最後に一言。花火の「ばーか」はとても可愛い。
ああ、可愛い女の子に「ばーか」と言われたい。
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2017.12.21更新 評価を3.5→3.7に上げました