九条 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
日本を正しき方向へと導く救世主は裸の王子様。
記憶喪失の主人公、犠牲者皆無のテロ事件、二万人ニート・失踪事件など不可思議な伏線が多々あり
先の読み難い謎めくストーリーを「攻殻機動隊 S.A.C.」「精霊の守り人」の神山健治が描く社会派作品。
ただ、少子高齢化、難民問題、医療制度等、骨太の設定を誇る硬派な攻殻とは異なり、柔和な世界観。
その象徴が羽海野チカ・原案のチャーミングかつコミカルな絵柄であり、二十一世紀の日本の閉塞感を
皮肉的かつシリアスに映像化する作風とコントラストを形成するかの如く、甘美な恋愛模様を匂わせる。
特殊携帯電話、百億円を用いる壮大なゲームや、世界的人気ロックバンド(オアシス)のOP起用もあり
攻殻と比較しても、遜色のない深刻な社会的問題(ニート・就活)を扱っているものの、そう感じさせない。
それは、冒頭の主人公とヒロインの滑稽な出会い方からしても、方向性の見通しが立つほど明白であり
攻殻ファンならば物足りなさを痛切に感じるであろうが、ノイタミナの方針を鑑みれば妥当な策であろう。
無論、物足りないというのは攻殻を「比較対象」とする場合の評価であり、本作の正当な評価ではない。
個人的には、劇場版を含め単体で捉えれば良作であると評価する一方、比較の上でも良作の域であり
攻殻ほどプロットは、徹底されていないが、考察は充実しており、若者に一石を投じるメッセージもある。
二番煎じ感は拭えないが、攻殻の世界に、ユーモアを交え、簡易に表現する故、受け口を拡大しており
攻殻に対し興味を抱きつつ、その難解さから敷居の高さを感じる方には最適の作品なのかもしれない。