北山アキ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
戦争の勝敗は経済力で決まる
最後まで観て {netabare}
戦争の勝敗は経済力で決まる。
絶え間なく物量を投入できる経済力で上回る側が勝つのだ。
賛否両論はあるだろうけど、現実はこの一言に尽きるし、その原則に則った結末にしたのだろう。
遺族年金とか経済的利益をを支給できるからこそ、将は兵士は使い捨てることができるし、兵士も捨て駒の役目を受け入れられる。
戦術兵器一騎の殺傷能力を強さと考えたマッキーや、ナルシスティックなヒロイズムに溺れたイオクの幼稚さとは対照的に、ラスタルは大人で、戦争の本質を理解していたということなのだろう。
ラスタルについては、途中で何度かマッキーを「力に執着する者の末路」と評していたことが伏線で、マッキーを反面教師として、ギャラルホルン改革に着手したということだと思う。
自らも権力に執着すれば、破滅しかないという判断なのだ。
「大義」を掲げる権威主義者に見えて、どこまでもリアリストである。
つまり、ラスタルの「大義」とは硬直した主義主張ではなく、「民衆の納得感」のことなのだ。
この点、柔軟性に欠ける理想主義者のマッキーとは段違いの政治的センスの持ち主と言える。
クーデリアに火星を譲ったのも、経済的利権を渡す代わりに、GHの軍事的な優位性を脅かさないようにバーターしたと解釈できる。
アーブラウなどの地球の政治力を火星から切り離したうえで、火星をGHが警察権を独占する経済圏の一単位として組み込んでしまえば、GHの勝ちなのだ。
たぶん、鉄火団なんて小勢力(特に主力を失った)の残党など「捨て置け」という程度しか思っておらず、逆にそれを見逃すことでノブリスが暗殺される可能性も織り込み済みだったはずだ。
鉄華団は存在感が薄れたが、こういう駆け引きにおいては、無学な傭兵でしかない彼らの出る幕はなかったということだろう。
とはいえ、彼らを通して兵士としての生き様は十分に描いていたと思う。
言うまでも無く、職業軍人にとっての戦争は大義よりも飯の種である。
(今となっては、戦争にロマンを持ち込む物語こそ嘘くさいでしょ?)
国家主義みたいな思想とかに汚染されていない少年兵にとっては、より純粋に自己と身近な者の生存が戦う理由になるはずだ。
面白かった。{/netabare}