岬ヶ丘 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
映画館と美術館のいいとこ取り
原作未読。原作はコミックとのことですが、これまでの原作コミックのアニメとはかなり趣が異なるので、機会があれば原作もチェックしたい。
作品を一言で表現すると、「映画館と美術館が一緒の世界で、良作映画を見ながらに同時に絵画も楽しむ」といった感じ。
物語は13の区からなる架空の国家が舞台。観察課という部署に所属する主人公が国家全体を巻き込む騒動に巻き込まれる...、よりも巻き込んでいるという表現が正しいか。どちらにしても多くのキャラクターが登場し、伏線や謎・思わせぶりな演出がふんだんに、なおかつ静かに水面下で蠢いていく。あまりに表面上の展開が静かなのと思わせぶりすぎて何がどうなるのか全く見当がつかず、途中で若干眠たくなってしまった(笑)。
しかし主人公の出生の秘密が明らかになった頃から急に物語が動き出し、ラストの結末まで一気に駆け抜けた。それに伴って明かされるニーノの過去もまた感動もの。最終的な結末もうまく着地させ、まとめきった印象。最後まで明かされなかったあの人は、まさかのあの人でしたか。もう一度見返すと色々と新しい発見がありそう。
またOPED含め全体的に音楽が非常に素晴らしく、映画館のいい音楽環境で聞けたらどれだけ楽しいだろうと感じ、そういう点でも映画館らしい作品。全体的に長編の大人向け映画を1クールでじっくり見ているような感覚だった。
一方画的には、まずキービジュアルから目を惹かれた。独特のタッチのキャラ画と鮮やかでおしゃれな背景。食べ物・服装などの小物まで丁寧で魅力的に描かれていて、アニメーションならではの強みを感じる。インタビューで拝見したが、モーヴ役の田中さん曰く、「画はまるでアートのよう」とのこと。それを見て私もなるほどなと思い、本作の画はある意味芸術品といってもいいかもなと再認識。作品のヴィジュアル全集出れば買いたい。
まとめると映画館と美術館の要素をいいとこ取りしたおしゃれなアニメ。
派手さはないものの、物語・画・音楽・お芝居のどれをとってもクオリティーの高い良作。