カンタダ さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
少女漫画的佳作
ヤングアニマルで連載されているそうだが、漫画は1巻で断念。レディースランチの詰め合わせ的な少女漫画的描写(貶している訳ではない)はどうしても我慢ができないのは、当方がおっさんであるからだろう。
今作のアニメもやはり少女漫画的描写が少なからず見られ、かなりの忍耐を強いられたが、知人の勧めもあったため、なんとか観終えた。
少女漫画的とはなにかと言えば、一言でいえば、男主人公の女々しさである。女性が描いた漫画は男性にはウケない理由の一つがそれだろう。
女性が描いたから、という理由から読まない人も少なからずいるらしいが(性別不詳のペンネームを編集から勧められるらしい)、これにはある程度理由がある。
というのも、女性作家が描く男性像と男性読者が求める理想的男性像に、小さくないズレがあるためだ。繰り返すが、少女漫画での男性は、女々しいのだ。一例を上げれば、すぐに泣く。だが男はまず泣かない。泣いたとしても必ず堪えようとするものだ。
男は自分の弱さをひた隠しに隠し、他人に見られることを極度に嫌うものだが、どうも女性の描く男主人公は涙もろすぎていけない。「メソメソするな!」と活を入れたくなる衝動を抑えて鑑賞するのは骨が折れる。
男がメソメソするのに、反射的に少なからぬ嫌悪感を催すのは、私だけではないはずだ。こういったズレが解消されないかぎり、少年誌と少女誌の溝は永遠に埋まるまい。埋める必要もないが。
さて、他に気になったのは、物語が主人公の暗い心的描写を基調に進められていくのだが、しばしばコメディ色の強い描写が挟まれる。これがどうもチグハグな印象を与え、いちいち没入感を損なわせている。
ちなみに主人公の零は孤独ではない。孤独に引きこもっている青年だ。なぜなら彼のおかれている環境は羨むべきものだからだ。
優しい三姉妹、「親友」を自認する二階堂、敬愛すべき先生などなど、彼の取り巻く環境は孤独からは程遠い。
これを孤独と言うのならば、それこそ世界中から総スカンを食らうこと請け合いだ。
彼は三姉妹と距離を置こうとする態度からも伺えるように、他者との交流を恐れている。従って、彼は自ら孤独に身を置こうとしているだけの、精神的引きこもりなのだ。
長々と書いたが、上記の事柄を除けば、十分に鑑賞に耐えられる作品だった。孤独に引きこもる主人公が、他者との交流のなかで成長する姿を描いた佳作である。続編を前提としているためか、物語はまとまらずに終わってしまうが。