どらむろ さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ギャグや萌えに徹しきれず、政治要素が不愉快。似た路線なら「幕末Rock」の方が面白いです。
スマートフォンアプリゲーム原作の、(なんちゃって)アイドルアニメ全12話です。
可愛いアイドル達が「アイドル議員」として腐敗した既存政治(あからさまに自由民主党)にライブで立ち向かう。
アイドル物というよりはトンデモコメディー路線なんですが、中途半端な政治要素と噛み合っていなかった。
…結構面白い側面もあり、全面的に駄目ではないのですが(特に前半は悪くない)、後半以降が不愉快でした。
「ゲーム原作」「アイドルが歌やライブで体制権力に立ち向かう」「トンデモコメディー」「ライブで洗脳」
と共通項の多い「幕末Rock」の方が圧倒的に面白いです。
{netabare}『物語』
美少女アイドルが国会議員になって政治に挑む!
レッスンやライブなどアイドル活動もしながら、諸問題に直に触れていき、アイドル議員を快く思わない既存政党「楼凱党」(ろうがいとう)の妨害や議論対決→最後はアイドルライブで強引に洗脳して大勝利♪
酷く泰平化されてる!(幕末Rock)
…いや~、こういうトンデモな設定とノリ自体は割と好きです。
アイドル側はリベラル(というか、お花畑な草の根活動家)めいたスタンス、政権与党の楼凱党の方が現実的で正論に思えるケース多い…
それでもアイドル活動で民意に直に触れたピュア(お花畑ともいう)なアイドルたちの立場も決して間違いでは無いし、トップダウンの正論だけが常に正義とは限らない。
こういう視点は、意外とバランスは取れていたように思える。
意外なんですが、政治劇としては案外悪くはない気が。(良くも無いが)
…それが娯楽アニメとして面白いかは別として。
同時期の「タイムボカン24」と似た構造として「主人公側より敵の方が妥当じゃね?」と思わされるのは、王道に反する為、楽しみ難い。
(もしかしたら製作者は割と本気で主人公側の方が妥当だと思っているのかも?だとしたら価値観が違うので何とも言えない…)
前半(というか序盤)は良い意味で狂気を感じる展開多く、解決法やオチも非常に雑なのが、トンデモコメディーとしては悪くない。
正論では劣勢だけど、ライブしてアイドルオーラで洗脳しちゃえ♪な雑な展開は、むしろこれで良いですw
アイドル物としては、ダブルヒロインが割と真面目に悩んだり成長要素がある。
ただ、それが見ていて面白いかは微妙なところ。
4話までは中々面白い、5話辺りから早くも微妙になっていく。
5話の保育園児が立てこもり事件起こす話は、幼児とはいえ明白なテロ行為、コメディーとはいえ看過し難い。
※某航空機漫画に、国外退去させられる外国人の友達の為に、中学生たちがハイジャックテロ起こす話がありますが…
こういうリベラル(苦笑)のテロは美談とは思えず、受け入れがたい。
ただ、頭でっかちの正論ばかりなキャリア議員が、軽視していた現場のママさんパワーを知り固い考えを改める流れは好評価。
5話でいったん評価下げたと思いきや、6話7話は中々良くて評価持ち直し。
7話の偉大な元老(の幽霊)たちと交流する、良い話だった。
ここら辺がピークで、以降は楼凱党の妨害が許容範囲を超えて不快になっていく。
それでも、悪党が悪いこと自体は王道で、これを打ち破るカタルシス次第では評価好転もあり得るのですが…
「アイドル側のルール(アイドル活動で強引に洗脳)」が「楼凱党のやり方(現実的な正論+現実的な悪意)」に踏み躙られるのが、致命的に面白くない。
ライブして勝って洗脳という世界観に基づくトンデモコメディー、が台無しになってしまっている。
※例えばカードゲームアニメだと、どんな悪党でも「カードゲームで決着付ける」お約束は守る事で、独特な面白味生んでいる。
このお約束が蔑ろにされてしまうと、(何のためにカードゲームやったんだよ…)と思ってしまう。
敵「奴らをデュエルで拘束しろ!」→主人公「デュエルだ!勝ったぞ!」
→敵「やっぱり物理で拘束だ!」主人公「そんなぁ」
こういう展開だとガッカリしてしまう。
(某人気カードゲームシリーズ史上、最悪の不人気作が、これ)
本作も、敵政党もアイドルライブ勝負の土俵に乗ってくれれば良かったのに。
「幕末Rock」みたいに。
9話で伝説のアイドル達が立ちはだかり、これを破るのは良かったけれど、勝ったのに逆に追い詰められるのは興醒めです。
以降、敵の妨害が卑劣過ぎて更に不快感が増すばかり…
最終話の「昨日の敵は今日の友」な王道は熱くて良かったです。
アイドル議員による対話が無駄では無かったと思わせてくれる。たとえ洗脳ライブで酷く泰平化されてようとも。
たとえ強引なご都合主義であろうとも。ここら辺は別に評価を下げない。
総じて、トンデモコメディーと正論政治劇が、致命的に水と油でした。
「アイドルやってないで政治しろ!」と敵に正論言わせちゃダメだろうと。
コンセプトは悪くなかっただけに惜しい、コメディーと萌えに徹して欲しかったです。
『作画』
アイドルたちのキャラデザは可愛い、黒髪な鬼丸さんが一番好み。
キャラデザは良いがしぐさや表情など、ところどころチープ。
アイドルアニメとして肝心のライブは三流。
『声優』
新人からベテランまで豪華、伝説のアイドルは丹下桜さんや田村ゆかりさんでオーラがすごい。
このアニメ一番の収穫は丹下さんの声聴けた事だなぁ…。
『音楽』
つんくによる楽曲は中々良かった。本編が伴わないのが残念。
『キャラ』
メイン主人公の星菜夏月(ほしななつき)ちゃんは天真爛漫に突っ走る、かわいい。
挫折要素はいまいち活かせていない。
もうひとりの真面目系な鬼丸静(おにまるしずか)さんの方が、アイドルと政治家の狭間での葛藤や、父との関係などドラマ良かった。
アイドル議員はキャラ濃い子多いけれど個別の掘り下げは微妙。
楼凱党の方が印象強い。どう見ても小泉純一郎な総理とか…
各話の議員たちの方がキャラ立っている。
特にキャリア議員は最終的に本作で一番好印象。{/netabare}