カンタダ さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
最後の最後で
まさか信之助の父親が八代目八雲だとは、想像だにしない展開だった。これは、よくない。
なるほど、確かに作品中では誰の子かは、明確にされてはいない。が、それまでほぼ大親分でほぼ固まっていた所に、わざわざ八雲の話を持ち出してくることと、小夏の「恋心」を告白されたのでは、そう受け取らざるをえないからだ。
さらに加えるなら、青年に成長したの信之助の姿である。顔立ちも話し方も八雲を強く連想させる。これだけ材料が揃えばもう十分だ。
それにしてもいくら八雲が二代目助六が述べたように「情にほだされやすい」のが八雲の業であるとはいえ、さらに、小夏が「助六と八雲の血を絶やしなくない」と言っても、二人は養父と養女の関係である。それに手を出すのは畜生の業である。
一夜の過ちであれば、まだ許せなくもないが、小夏が身ごもるまで情事を重ねたのかと思うと、いくらなんでもあんまりであろう。八雲の業の深さは尋常ではない。彼自身、己の業の深さは自覚していたはずであって、そうであれば、踏みとどまるべきだった。これでよく落語と心中しようと思ったものである。
人生のなかで伴侶にも言えない秘密の一つや二つは、決して好ましいとは言えないが、ある。しかし、与太郎の秘密は小夏を想って隠しているのであって、小夏のように不公平な秘密ではない。彼女の秘密のために与太郎は大親分との諍いを演じ、あわや彼の怒りを買い、まさに「ただではすまない」ところであった。
それにもかかわらず、頑なに彼女は秘密を隠し通し、それで恬として恥じず、なんの負い目も持たないのは如何なものか。これまた畜生の所業である。
八雲にしても、自分の子を弟子に育てさせてさせ、それを隠し通して、なんの良心の呵責もなかったのだろうか。ここでも八雲は罪を重ねている。小夏と八雲は共犯者と言われても仕方がなかろう。
正直ここに来て失望してしまった。最後の最後で台無しにしてくれた。知らぬは亭主ばかりなり。愛する妻である小夏と、敬愛する師匠に裏切られた与太郎は道化である。