Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「3月」「ライオン」「将棋」これらを繋ぐモノとは…?
この作品の原作は未読ですが、監督が新房さんでアニメーション制作がシャフトという鉄板の組み合わせに加え、NHKで放送されるという事…そしてかやのん、花澤さん、久野さんが出演される事を重ねて知り視聴を楽しみにしていた作品でした。
新房さん+シャフトの組み合わせで頭に思い浮かぶのは、最近のでは西尾維新さん原作の「物語」シリーズや週刊少年ジャンプで連載していた「ニセコイ」など、カミソリの様なエッジの効いた作画の印象的な作品です。
でもこの作品はどちらかというと、線の淡さに特徴のある作品でした。
この物語の主人公は、高校1年生の桐山零…
幼い頃に両親を亡くし、父の友人で棋士の幸田8段に引き取られ史上5人目の中学生プロ棋士なった少年です。
幸田家は父の影響で子供2人も幼い頃からプロ棋士を目指して頑張ってきました。
そんな一家団欒の中に零が結果的に割り込んだ形となってしまったんです。
何故なら幸田の実子より零の棋士としての才能の方が圧倒的に勝っていたから…
義姉の香子…義弟の歩…
二人とも強くなるための努力を怠っていた訳ではありません。
ですが二人とも幼い頃に知ってしまったんです。
圧倒的な才能の前には凡人の努力など無に等しいという事を…
それと同時に突き付けられた現実は、これまで注いで貰ってきた実父の寵愛が受けられなくなったこと…
たかが将棋…
生きていく上で必ずしも必要なモノではありませんが、棋士の家に産まれた子供が生まれながらに背負う重責が棋士としてあり続けること…そう考えると、零はこれまで義姉と義弟が培ってきた全てを一瞬のうちに奪い取ってしまった…
もちろん、零に非は一つもありませんし、故意に仕組んだ訳でもありません。
ただ結果だけをみると義兄弟からはそう思われても仕方なかったのかもしれません。
この物語は零がこの様な生い立ちを経て高校に入り…幸田の家を出て一人暮らしするところから始まります。
人に感情を伝えるのが苦手…
人と接するのが苦手…
振り返ってみると零には苦手なモノばかり…
これまでの生い立ちが彼の苦手なモノを増やしたのかもしれません。
だって、彼が一番欲していたのは自分の居場所でしたから…
プロ棋士になって一番欲していたモノをようやく手に入れ…実際どうなんでしょう…?
彼の欲していた居場所って…あんなに空っぽな空間だったんでしょうか…?
きっと違うと思います。
だって将棋を指している時には盤面を対極にお互いの居場所がちゃんと用意されているから…
そこには人の息遣い…歓喜、安堵、落胆といった様々な人の感情が渦を巻いていて、嫌でも一人じゃない事を実感させられる空間…
零は何で将棋が好きになったんだろう…
独りぼっちで部屋にいる時、どうして過去の温もりを思い出してしまうのだろう…
学校に通う理由は本編で零が話をしていましたが本当にそれだけなんだろうか…
きっとこの作品を通してプロ棋士の敷居の高さを感じる事ができると思いますが、同時に居場所に求めてしまう人の温もり…この大切さをも描いた作品なんじゃないかと思いました。
だから、きっとこれから零は気付いていくんだと思います。
川本3姉妹の家は零の部屋とまるで真逆…
昔ながらの家の中には狭いながらも人の笑顔と温もり…そして思いやりに溢れている…
何もかもばっさり切り捨てて始めた一人暮らしはきっと若気の至り…
生きていく上で何が大切なのか…そしてその大切を守るためにどの様に行動する必要があるのか…
そしていつか…掌から零れ落ちたモノを拾えるくらいの大人に成長するのを期待しています。
オープニングテーマは、BUMP OF CHICKENさんの「アンサー」とYUKIさんの「さよならバイスタンダー」
エンディングテーマは、BUMP OF CHICKENさんの「ファイター」と米津玄師さんの「orion」
この中では2クール目のOPである「さよならバイスタンダー」が好きでカラオケで挑戦してみましたが、その難しい事といったらありません。
車の中ではそれなりに聴いていたつもりでしたが、実際に歌うのとは全然違い…思い切り撃沈してしまいました。
でもいつか歌えるようになりたい曲です。
2クール22話の物語でした。物語的にはこれから…というところで終わってしまいましたが、番組終了時に今年の秋アニメで第2シリーズが放送される事が決まっているので問題無しです。
これから物語の核心に切り込んでいく事になる訳ですが…どんな展開が待ち受けているのかが楽しみな作品です。