カンタダ さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
壮大な佳作
25話もあったにも関わらず最後まで観れたのは、作品全体としてしっかりと筋が通っていたためだろう。音楽も良かったが、マクロスプラスには及ばないか。
この作品の主題としては、愛と相互理解か、おそらくそんなところだろうが、特に訴えてくるものは感じられない。全体的に浅薄な印象しか残らず、物語の最高潮でも登場人物全体に思い入れができなかったためか、なんとなく白々しい。
最近の萌えアニメから見れば、硬派な部類に入るのかどうかは分からないが、女性はともかく男性がさほどデレないところは好感が持てた。
とはいえ、主人公の設定の掘り下げが不十分なためか、超美男子という印象ばかりが先行して、他に見るところがない。あるとすれば凄まじく鈍感で、男らしいというより、血の気の多いバカといった印象が拭えない。
忘れてはならないのが、ヒロインが救いを求めている時や、一人涙する時には、基本的に主人公が駆けつけるのがお約束のはずなのだが、彼はこれをことごとく外して美味しい場面を他の男にさらわれてさえいる。
そこはある意味驚異的であり、かつ新鮮だった。つまり主人公失格である。
そんな主人公になぜか惹かれる二人のヒロイン。「それでいいのか?目を覚ませ!悪いことは言わないから他の男にしておけ」と余計なお節介を焼きたくなる。
ランカが自分の善意から全人類を存亡の危機に陥れかけたのは、ある意味示唆に富んでいて、むしろ良い。「地獄への道は善意で舗装されている」という格言を身を挺して宇宙全体に知らしめた彼女の功績は大である。彼女は確実に宇宙史にその名を刻むこと請け合いだ。
シェリルに関しては、彼女が一番魅力的人物だった。ストリートチルドレンから宇宙の歌姫に登り詰め、天狗になっていた所で病で興行休止を已む無くされる。そのあいだ後進で格下だと思っていたランカにあっという間に抜かれ、鼻っ柱をへし折られた彼女は失意のどん底にまで落ちる。
おまけに死の宣告まで受けるという追い打ちを食らっても、それでもなお歌い続ける彼女の姿は、まさに燃え尽きんとする線香花火の最後の輝きである。
もはやランカなど目じゃない。儚く散ろうとする女が自分を想ってくれている。これに心を揺さぶられない男はいない。ここで決めなきゃ男じゃない。ゆえにアルトは男ではない。
やはりなんだかんだで、主人公のアルトのダメっぷりが際立つ作品だった。ブレラが兄弟でなければ、ランカをめぐる恋敵は彼だっただろうし、アルトは完全に敗北していた。ここまでダメなのだから、せめてチート級のパイロットスキルくらい備えていても良かったくらいだ。ここ一番で踏み込みの浅い中途半端な主人公という感が否めない。