「機動警察パトレイバー 初期(OVA)」

総合得点
70.4
感想・評価
171
棚に入れた
904
ランキング
1584
★★★★☆ 3.8 (171)
物語
3.9
作画
3.6
声優
3.9
音楽
3.6
キャラ
4.0

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 2.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

発表当時の未来世界は20世紀の彼方へ。

アニメーション制作:スタジオディーン
1988年4月25日 - 1989年6月25日に発売された全7話のOVA。
監督が第6話までが押井守、第7話のみが吉永尚之となっています。

【概要/あらすじ】

1998年(漫画版&OVA版が発表されたのは1988年)の東京が舞台。
二足歩行の作業用ロボット“レイバー”が開発され、主に建設作業に実用化されている世界観。
東京湾を埋め立てて首都圏の土地開発に利用するという国家事業“バビロンプロジェクト”
そのために東京には大量の土木事業者が集まっていた。
政治が悪いだとか言って世の中に不満を持つ労働者階級にはレイバー乗りが含まれているわけで、
パワードスーツ的な運用が可能で犯罪に便利過ぎる性能を持っているせいか、レイバー犯罪が増加。
“バビロンプロジェクト”に反対する環境団体も、レイバーを使って反政府活動を起こしている。
それに対応するために警視庁は「特科車両二課中隊」を設立してパトロールレイバーを配備。
そして、これまで活動していた「第一小隊」に加えて、
新規隊員と新型機“イングラム”で編成された「第二小隊」を増設。
このアニメは、戦うおまわりさん「第二小隊」の面々を描いた作品です。

【感想】

パトレイバーといえば押井守監督というイメージが強いですが、
元々は漫画家の“ゆうきまさみ”が、こんなロボットアニメ作りたいな!という願望を持っていて、
メカデザイナー“出渕裕”の協力を得て、テレビアニメ化に向けて形になってきたものの不採用になり、
“伊藤和典”“高田明美”そして最後に“押井守”が参加して、
後乗せで色々とアイデアを練り直してOVAという形で苦節六年で日の目を見た作品であり、
共同原作者として“ヘッドギア”名義となっておりますね。
漫画版とOVA版はパラレルストーリーなのですが、
そこは、“ゆうきまさみ”と“押井守”の作風の違いなのかもしれません。

さて、このOVA!戦闘シーンが少なすぎます。
これって本当にロボットアニメ?会話シーン多すぎ!
これじゃ、押井節を撒き散らしているコメディアニメだよぉ…。

なんと!主役機のイングラムが一番マトモに動いているのがOPアニメであって、
第1話を最後に押井守監督である間はロボットを相手に戦わないですし、
イングラムの役割なんて人型のロボットとしての意義もなくて出番も少ないのです。

1本1000万円という低予算故なのか?と思えば、
押井守監督の作で2014年 - 2015年に公開された実写版のパトレイバーの評価が、
「パトレイバーが全然活躍しない」などと四半世紀経っても不変であるというから、
これは完全に押井守監督の趣味なのであります。

それが押井監督でない最終話になった途端に、漫画版にある企業名が初めてアニメで出てきたり、
ロボット同士の戦闘が解禁されるのですから非常に分かりやすい!
原案者の漫画家による漫画版でも、巨大企業のロボットとの対決が話の軸になっていますので、
押井守氏の構想の外にあるものが、本来に志していたパトレイバーの在り方だったのです。

2話目は香貫花登場、3~4話目は単発コメディ話と来て、
5~6話目の「二課の一番長い日」←これが、押井監督が目指していたパトレイバーの形っぽい。

監督自身が左翼活動に片足を突っ込んだ経験があり、
国家権力 vs 反体制組織みたいなのをやりたかったようです。
パトレイバーの世界観と設定は、監督の頭のなかで物語を構築する絶好の素材であり、
そのなかで警察用レイバーの存在は申し訳程度であり、
国家の治安がどうとか、テロリストやらクーデターやらの話に組み込む戦闘機械に過ぎない。
監督の思う主役はレイバーを操縦する泉野明巡査でなくて彼女の心境を漫画版みたいに描くことはないですし、
話の軸は後藤喜一警部補であり、警察組織の中の大人のおじさんの話を描きたくて描きたくてたまらない。
ロボットプロレスみたいなものは、眼中にないみたいですね。

監督は作品作りに没頭すると周りの意見やアイデアを跳ね除けて我が道を行くのは周知ですが、
それでも、OVAシリーズではコントロール出来ていたようで。
劇場版二作目でそれが暴発して、作りたい方向性が違いすぎて出渕裕と絶縁状態になったのは有名な話。
やっぱり、難儀な人ですわ…。
“ヘッドギア”のメンバーで実写版の参加者が押井監督のみであり、
『機動警察パトレイバーREBOOT』では、ゆうき・出渕・伊藤の三名がクレジットされているのを見ると納得。
それでも、その映画が高評価されてるってのが本当に凄い人!

このアニメが当時に人気が出たのは、
・一般的なTVアニメと比べてリアル寄りな世界描写
・大人の社会を覗かせてくれるような人物設定
・警察という組織を取り扱ったこと
ぐらいでしょうかね。

このあたりの練り込みは押井監督が参加していなかったら不十分だったかもしれず、
評価されるべきなのは確かなのでしょうけどね。

私にとってのパトレイバーとは、週刊少年サンデーで連載されていた、
ゆうきまさみによる漫画版がスタンダードなのですが、こっちもありといえばあり。
けど、当時だから目立ってた点も否めず、
設定マニアが増加しつつある今時のアニメと比較したら埋没してしまう作品であると思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2017/03/24
閲覧 : 305
サンキュー:

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