カンタダ さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 2.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
全体としては良作
設定の掘り下げに多少の不満が残るものの、最後まで観られた。
全体的に重苦しく、逼塞感漂う雰囲気のなか物語は進行し、事実裏では子供の間引きという血に塗れたおぞましい慣習が粛々と行われている。
ここで気になるのが、なぜ呪力が発現しない子供と、呪力が不十分にしか発達しなかった子供が間引きされるのかが、最後まで説明されず疑問が残る。悪鬼の出現を恐れ、社会秩序を保つために様々な制約を子供に課すのは理解できるが、成績の振るわない、または、呪力を持たない子供が社会の脅威になるとは考え難い。彼等を間引きする理由が見つからないため、理解に苦しむ設定である。
次に登場人物について。最後まで早季が瞬を引き摺ってしまい、克服するに至らずに終わるのが心残りだ。結局早季は覚と結ばれるのだが、ずっと同じ1班だったということ以外特に動機が見当たらないのは残念だ。
瞬が早季の本命であり続けることは、覚との結婚はある意味不本意だろう。孤独を恐れるために消極的理由から手近な男を選んだとも取られてしまう。
それならばヒロインである早季が、本命である瞬を超える存在としての、覚の本命へ昇格するための出来事があっても良かっただろうが、それがなかったのは残念。あくまでも覚の位置は「同じ1班のメンバー」に終止した。
本作品のテーマの主要な一つは「人間存在の尊厳」であろう。足を踏んだものは踏まれたものの痛みなど感じないもので、恣意的に自分のコロニーをいつでも滅ぼされるバケネズミにすれば、人間の存在は脅威であり、屈辱であろう。そういう意味ではバケネズミらの反逆は正当なものだろう。
心優しい早季でさえ、それにようやく最後になって気付くわけだが、他の人間はどうしてもそこには至らない。人間の業の深さを考えさせられる作品。