退会済のユーザー さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人間を描いたアニメの傑作
3月のライオン。非常に素晴らしかった。これ以上ない終わり方である。
シャフトの演出とストーリー運びが最高の形で示された一本ではないだろうか。
終盤が近づくにつれ、毎回の様に感涙する有様だったのが恥ずかしい。
まず、作りが丁寧すぎるほど丁寧だ。登場人物の心情から情景描写まで、これほど丁寧に、しかも自然に表現されれば、其処には感嘆しか在り得ない。
最初の方こそ所謂シャフト演出がクドくなる場面が多々あったが、中盤以降はそのクドさを抑えつつ、しかしそれでいて「これこそシャフトだ」と言える…謂わば短所を抑えて長所を伸ばした演出になっていく様は見事としか言い様がない。
また、原作もそうなのかは分からないが、台詞まわしの妙も素晴らしい。
一場面を抜き出せば…終盤、山形で島田八段について桐山が語り、それを受けて山形ジャーナルの記者が「そうか…そうですか」と答えるシーン。ここは思わず唸ってしまった。
こんな台詞、普通は使えない。
それを筆頭として、細かい箇所にも感心してしまう。
私も昔将棋を指していた。だからと云う訳ではないが、将棋に甘えている作品は良く分かる。
昨年公開された映画「聖の青春」。
村山聖の生涯を描いた小説の映画化ということで、相応の期待を持って観賞に望んだ。
が、あまりにも酷すぎた。面白くないのは勿論として、命を懸けている棋士達に対する一片の敬意も無いのは許せない。
しかし、この3月のライオンは、これ以上ない形で将棋に生きる棋士たちの生き様を描いている。
その苛烈なまでの生き方に、我々は心を打たれるのだ。
将棋を指してるシーンが少ないと批判される方は「見方」を少々勘違いされているのではないだろうか。対局が見たいのなら将棋放送を見ればよい。
スポーツや、座って行う競技でも百人一首などと違い、あまり人体の動きの少ない将棋を指す場面のみを映して映像作品として何の面白みがあろう。
そんな履き違えた感覚が、上述した聖の青春において、棒役者 東出昌大による「羽生のモノマネ」という汚点を見せつけられる苦痛を産み出してしまうのだ。
これは、将棋を題材としたヒューマンドラマなのである。どこに主眼をおくかは一目瞭然ではないのか。
私としては、前期・今期通して1番素晴らしいアニメだったと思う。
10月から二期が始まるのが決定しているので、それまで楽しみにして待っていようと思う。