カンタダ さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ヒロインの交代は不要では?
シモンが乗り越えるべき象徴的存在として、兄貴分であり精神的支柱であるカミナ。
彼が戦死することによってシモンは成長する大きなきっかけを得る。
彼は観賞者の期待に見事に答えてくれるのだが、その際にそれまでのメインヒロインであったヨーコが、後に登場するニアのために準ヒロインに降格してしまう。
交代の賛否は分かれようが、個人的には反対の立場である。というのも、少なからず観賞者にとっては物語の初めから絡んでくるヒロインの降格は、単純に混乱を招くからだ。ヒロインは決して軽い存在であるべきではなく、物語の鍵となるべき存在である。
例えば本作品に引きつけて言えば、カミナの死を克服することで成長したシモンの、その証明としてヨーコがシモンに対する感情を、カミナに抱いていた想いと同質か、後の展開によっては、それ以上のものに発展させる道もあったと思う。
なぜそこまでの役割をヨーコに与えるかと言えば、初回からの登場人物であることと、カミナの死による喪失感をシモンと共有できる唯一の存在だからだ。カミナの死は彼女にとっても乗り越えるべき課題であり、愛した者の死は別の者との恋愛で埋められる類のものではなく、彼女自身によって克服されなければ意味をなさない。
その点が本作品のなかでは詳しく語られることなく、シモンと共有する課題を共に克服する機会を与えながら、しかしシモンの成長だけで完結してしまい、降って湧いた感の否めないニアにヒロインの座を譲り渡してしまうのは勿体ない。結局ヨーコの役回りは宙に浮いた状態が最後まで続き、再び同じ傷をえぐることで解決を図ろうとしているが、すっきりしないままに完結してしまう。
ニアに関して言えば、彼女の背負わされた課題は「自己存在の懐疑」であり、「愛する者の喪失の克服」とは異なるものなので、シモンやヨーコやとの課題とは明らかに性質を異にしている。したがって、シモンとの課題とは重ならず、彼との関連性もヨーコとのには及ぶべくもない。ゆえに、ニアはヒロインに昇格させるべきではなかったというのが個人的結論だ。
作品を通しての評価としては、シモンの成長を描いた前半は楽しめるものだったが、後半はニア救出劇に終始しており、一途な愛の物語としては楽しめるのかもしれないが、それ以上のものは見出だせなかった。それでも全体としてはそれほど停滞なく話が進む、緩急のついた作品であるので楽しめるものだろう。