カンタダ さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
今後の作品に期待
脚本の掘り下げに少々不満が残る。自分の運命を受け入れることを拒む夏目柴名は、積極的な己の宿命に対する抵抗であり、運命に従う他の歯医者のアンチテーゼに位置する。己の運命に従うか、抗うかは、それぞれの生き方において正しい。
しかし、夏目は運命に反逆することによって生じた多数の犠牲者を歯牙にも掛けないのは如何なものか。自身の業の深さによる葛藤があってもよいはずであるが、それがなかったのが残念だ。
それは他の歯医者にも言える。悟堂ヨ世夫も地上での暴走した虫歯菌の凄惨な殺戮を前にして、まったく意に介さないどころか、「人生は楽しい」などと場違い極まりない発言をする始末である。限られた時間枠の中で纏めるのは難しいのは解るが、いくらなんでもあんまりではないか。そもそもこの話のテーマは運命や生死に関わる重大なものを題材としている以上は、その辺りにはもっと気を使うべきではなかったか。
あと細かいことを言えば、岸井野ノ子が敵兵に殺される運命にあるならば、敵兵に殺される意外に死ぬ心配がないことになる。そのために、彼女の勇敢な行動もその意義を損ねてしてしまう。視聴者としてのわがままを言えば、野ノ子を殺すはずの敵兵が物語に絡んできてくれるともっと緊張感が増したであろう。せっかくの伏線を活用されなかったのが惜しまれる。
ベルナールにしても、運命に従う歯医者の態度に反対するのであれば、運命に抗うがごとき積極的行動に出てもよかっただろう。見ていて少々積極性に欠けるし、もし運命に従うという反対の立ち位置にいる野ノ子が、運命に従うことはむしろ積極的に生きることであるとするのであれば、その点を強調してくれてもよかった。
ともあれ、いろいろ書いたが私はこの作品は好きである。世界観も楽しめるものだった。
上記の苦言は今後の期待から出たものであると受け取ってもらえれば幸いである。