シャベール大佐 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
孤独な少年棋士と、少年を気にかけてくれる優しい人々
幼いころに家族を亡くし、現在は1人で暮らしながら高校に通っている孤独な将棋棋士・桐山零が、近所に住む川本家の三姉妹など周囲の様々な人との触れ合いの中でちょっとずつ心を開き、人間として、棋士として成長していく姿を描く作品。全22話。
最後まで観終わって、普通に良いと思った部分と、いまひとつだと感じた部分に結構はっきり分かれていましたが、全体的にまあまあ楽しめました。
まず、良かったほうは、零の生活を描く人間ドラマ的な部分です。孤独な零を優しく包んでくれる川本家の人々や、学校生活に馴染めない零を常に気にかけてくれる高校の先生、零のことを終生のライバルと公言する同年代の棋士・二海堂といった善良で温かな人々は、観ていてとても気持ち良いです。また、零が一人暮らしをしている部屋の、空虚で冷たく、生活感が欠落した様子と、古い木造一軒家の川本家の、決して大きくはなく綺麗でもないけれど、家の中の細々とした部分などに、確かに人間が暮らしているという温もりが感じられる様子は全く対照的で、零の孤独を川本家の優しさが溶かしてくれるといったイメージを上手に表現できていました。
一方で、物足りないと感じたのは、将棋の描写です。作品内でもそれなりに多くの時間を使って将棋の対局の場面などが描かれていますが、残念ながら将棋というゲーム自体の面白さや奥の深さは伝わってきませんでした。登場する棋士の背景や因縁など、キャラの掘り下げ描写には力を入れていて、結局は将棋をしているパートでも、将棋自体の魅力が物語の中心になるのではなく、やはり人間ドラマになっていたように感じました。囲碁、麻雀、競技かるたなどを題材にした他の作品には、試合や対局それ自体が熱く描かれている「文化系スポ根」的な成功例もありますが、この作品ではその系統の面白さは期待しないほうが良いです。
作画はかなり綺麗。舞台となっている月島あたりの風景が、現実とはちょっと違う色合いになっていたりして、観ていて素直に美しいと思いました。また、しばしば描かれる夜の川本家の、窓から外に漏れる部屋の灯りが、とても優しく温かく感じられたのも印象的でした。
声は、川本三姉妹を演じた、茅野愛衣、花澤香菜、久野美咲がそれぞれ良かったと思います。音楽は、OP、EDともに1クール目のほうが好みでした。
全体的に、いかにもNHKアニメらしい丁寧な作品でした。10月から2期の放送が決まっているようで、続きは普通に楽しみです。