デリダ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
アニメ版としては異色の銀河英雄シリーズ
銀河英雄伝説自体は本編でのレビューで書かせていただいたので端折らせていただきます。
この劇場版黄金の翼はアニメ版の中ではかなり異色なものに感じられました。
というのもキャラデザ特にキルヒアイスとヤンがだいぶ違いますね。これもまたよしなんですが(個人的にはこっちのキルヒアイスの方が好みでした。かっこいい!)
あと声優陣ももろもろ違っていて、これだけで作品が持つ雰囲気がだいぶ変わるんですね。
このレビュー欄を見る方はおそらく本編完走した方だと思われるのでかなり変なところを突っついてみようと思うのですが
本編後半でいい味を出していた堅物軍人レンネンカンプが黄金の翼では完全モブキャラとして出てきます。
個人的には本編で描かれていた自らが生きてきた道がゆえに縛られ融通が利かなくなった老人として描かれる不憫な男でしたが(すごく好きでした。メルカッツ、ムライと共に私の中の愛すべき三大オッサン像です)
今回はモブだけに少しばかり若い頃であり、本当にセリフは二言、三言程度なのですが彼の正義感が垣間見えてよかったです。
そして、この作品単体での評価をしようと思うのですが
外伝だけあってやはりストーリーとしては重要な位置はこの作品は持ちません。銀河英雄伝説の世界を広げる意味で外伝にふさわしい作品は他の外伝作品群の方がいい仕事をしていますが
しかしこの作品に私が与える評価はひとえに監督がつくりあげた視覚効果に集約します。
銀河英雄伝説シリーズの作画は絵柄や様式の古さは置いておいてもあまり特出して評価するに値するとは考えられません。戦闘シーンなどからしても。
宇宙空間での艦隊戦闘、殴り合いや銃撃戦のスケールに差はあってもどちらかが突出することなく可もなく不可もなく。
要するにそこが視覚的に重要な部分ではなかったということができるでしょう。
その代わりに劇的なシーンのキャラクターの一瞬の表情、コマが少なくとも感情表現の豊かさはこのシリーズの売りの一つだとも考えています。
この点において黄金の翼は異色だと感じられました。
一時間のうちの最後の最後のラインハルト、キルヒアイスの戦闘シーンの演出と作画のためだけにこの作品は存在してます。
この作品を見たときは本当に目を奪われました。神がかっています。
コマが多いとか丁寧な描写とかではないのですがオペラのような緊張感のある色彩と躍動感にあふれたカメラワーク。
監督たちの才能がこの約10分に集約されこの作品の価値もまた同じです。
銀河英雄伝説シリーズではこの種の満足は得たことがなかったのでこれであらゆる種類のアニメーションとしての満足を与えられたので少しばかり充足しました。