「無責任艦長タイラー(TVアニメ動画)」

総合得点
70.5
感想・評価
184
棚に入れた
1125
ランキング
1559
★★★★☆ 3.8 (184)
物語
3.9
作画
3.7
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
4.0

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ネタバレ

どらむろ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

運の良さで無双する?掴み所の無い宇宙戦記コメディー

ライトノベル原作のコメディー全26話(+OVA1話+9話あり)。
地球と敵宇宙人が宇宙戦争やってる状況で、主人公タイラー艦長が、悪運のみでピンチをのらりくらりと切り抜けていく…ように見えるが…!?
真面目な戦記ではなくギャグコメディーながら、90年代の骨太な名作でもあり。

テレビアニメ史上初の製作委員会方式、ライトノベル原作史上初のテレビアニメなど、アニメ史から見ても画期的作品であり、アニメファンとして視聴して損は無いかと。
(レビューはテレビアニメ版のみ)

{netabare}『物語』
主人公が「運の良さ」と「いい加減さ」でいつの間にか無双している…?
これだけだと後続のありがちなラノベっぽいですが、本作は主人公無双に掴みどころが無いといいますか、ご都合主義なのにご都合主義じゃないかも?いや!やっぱり何も考えてないのか!?と終始モヤモヤさせられるような、不可思議な魅力がありました。
…本作の醍醐味はこの掴み所の無さ、大きく盛り上がるかと思えば終始グダグダ、ではつまらないのか?と言われると…何となく面白い?
近年の、主に1クール作品と比して、1話辺りの盛り上がりやギャグのキレは微妙なところも。
でも、そんな呑気なテンポも含めて、近年のアニメには少なくなった余裕や遊びがある。
2クールで(一見すると)ダラダラやりつつ、でも気が付けば引き込まれている…。

無責任艦長に振り回されるクルーたちのリアクションが面白い、特に生真面目で堅物なヤマモト副長(速水奨さん)が。
タイラーのロクデナシっぷりは、某ロクデナシ魔術講師とは比較にならんです!
舞台設定自体はガチ戦争中のシリアスなので、普通ならイライラさせられそう、でも、ヤマモト大尉やユリコ少佐、モヒカンみたいな荒くれクルーたちが視聴者の代わりに苛立ってくれる為か、見事にコメディーに変換されていた。
ここら辺、ありがちで安易な主人公礼賛の嫌味を感じさせないのがミソか。
尺に余裕を持って、呑気に、タイラーの無責任っぷりとクルーの苛立ちを描きつつ、普通なら大ピンチ!な状況から逆転していく痛快さ。
地味に、敵が無能では無いのもポイント高い。敵さん(タイラーを疎む味方上層部も)の駆逐艦そよかぜ撃沈作戦は、作戦としては教科書通り、でも何故かタイラーが勝っちゃうフシギ。
コメディーながら、ここら辺の戦記としてのハラハラ感は侮れんです。

タイラー抜きの、そよかぜクルーたちのカオスっぷりも。
艦長が無責任なら、クルーはロクデナシばっかり。
おバカなノリの日常系も面白かった。
宇宙戦艦(そよかぜは駆逐艦だけど)でミスコンは、後発のナデシコにも引き継がれてそう。
…本作は「学級崩壊した教室と、ダメ教師」というよりは「燻っているアウトロー選手球団と、(一見ダメ人間、でも名将?)な監督」な感じかも。
そよかぜクルーは有能だしやる気もあり、素行の悪さで落ちこぼれている、そこに無責任艦長の影響で、事態が好転する…
それらを2クールかけて、タイラーがクルーの信頼得ていく過程に納得感あるのが良かったです。

後半は敵のラアルゴン帝国のお姫様(姫ではなく皇帝だけど)アザリンちゃんとのロマンスに萌えつつ、ハルミさんユリコさんたち女性陣のハーレム物に、でも許せる。
一見グダグダに見えた前半含めて、気が付けばタイラーの魅力と交流が活きている。
タイラーの強運もご都合感薄れて、普通にピンチで飽きさせず。
実は運だけの男では無かったのか!?(と思わせて…やはり掴み所が無い)

前半は艦隊戦やってたので終盤も大決戦か!?
と思いきや、真面目な戦争を無責任に否定する…痛快。
戦記としては盛り上がらんですが、戦うよりも、人間性や楽しさが大事。
普通なら不可能、でもタイラーなら!
普通の作品ならばクライマックスな展開を、アッサリ流してしまうタイラー流。
…その後のラストまでの3話に余韻がある。
これまで散々、掴み所が無いと思わせての、タイラーの人間賛歌・自由な生き方が、じんわりと伝わりつつ、痛快なラストでした。


総じて、安易なご都合主義や無双系では無い、魅力的なアニメでした。
一見グダグダで盛り上がりに欠ける、でも何となく惹かれる、最後まで観れば、掴み所が無いと思われた魅力が(なんとなく)分かる。
2クールで瞬間風速的な面白さはさほどでも無い気もしますが、名作です。
(物語というか総合評価は、実質タイラー艦長のキャラ評価相応)


『作画』
女性陣が可愛い。ユリコ少佐とハルミ伍長は美人、ハナー姉妹はかわいい、そしてアザリンちゃんかなり好みです。
宇宙軍艦物としても、コミカル含めた作劇描写も申し分なし。
作画的に、今観ても中々良いです。

『声優』
辻谷耕史さんの間が抜けた、それでいて温かみのある演技がはまり役でした。
豪華声優陣、麦人さんや西村知道さんなど層が厚い。
女性陣も天野由梨さん、岡本麻弥さん、かないみかさん、そして笠原弘子さんと好演揃い。
…私的にMVPは、苦労人副艦長ヤマモト大尉を好演した速水奨さん。
速水さんのコミカル寄りなテンパった演技良かったです。

『音楽』
OP「just think of tomorrow」ED「ダウンタウンダンス」
90年代というか80年代末な雰囲気のオシャレかつ歌詞が分かり易い良曲、しかも実はタイラーの主題ちゃんと込められている。
BGMも要所でクラシック使うなど良い感じ。



『キャラ』
ジャスティ・ウエキ・タイラーという無責任艦長の魅力に尽きます。
物語の項であらかた書いてますが、不思議な魅力を持つ男。
のらりくらり、グダグダ、でも次第にこの男の魅力が分かってくる。
「さすが艦長!」とヨイショされるだけの底の浅い主人公ではなく、全編通しての確固とした人生観、それをいつの間にか通してしまう強運&人柄、主人公補正なのは間違いないが、それが嫌味にならぬ凄い主人公です。
ボケ老人・ハナー元提督を敬愛し、真摯に接する姿勢に、人生への賛歌と敬意が滲み出ている。
…このアニメの評価は実質、タイラーへの評価と同義。

もうひとり、マコト・ヤマモト大尉のツッコミと心労あっての面白さだった。
優等生だけど真面目お馬鹿で暴走するので、ある意味彼が一番ヤバい男。
カン違いから艦長尊敬…からの、実はダメなんじゃないか…?と揺れるのもミソ、彼の存在が、過度に主人公上げ過ぎない絶妙さに繋がっていた。
アウトローなクルーとの確執…からの、成り行きで仲良くなってくる感じも楽しい。
…全っ然作風違いますが。「ハイスクール・フリート」のシロちゃんは今思うとヤマモト副艦長ポジだった。
ミケちゃん艦長もある意味無責任艦長の片鱗があったし…

メインヒロインはアザリンちゃんだけど、正妻はユリコさん。
チョロくはないツンデレの鑑、ヤマモト大尉がアホの子な分、真面目さはある意味彼女が背負っていた。

感情に疎いアンドロイドで、次第に優しさを知る。
ハルミさんも奥ゆかしい性格とヒロイン力高くて可愛いです。

メインヒロインはアザリンちゃん。大国の君主としての重責と、奔放なお転婆姫な可愛さ。
敵側は彼女に振り回され、タイラーとの交流が、戦争の行く末を決めてしまう…すごい。
お姫様ヒロイン大好きですが、アザリンちゃんは特にかわいいです。

クルーたちはクセ者というかはぐれ者揃い、個別エピソードこそ乏しくても、愉快な連中でした。

アザリンちゃんの忠臣ドムはある意味一番タイラーに振り回されたライバル、ライバルなのに自然に友情が。
彼も掴み所が無い…と思わせての正統派のライバル。

ミフネ中将&フジ中将の悪徳コンビも、不快にならずに痛快コメディーに貢献。
ミフネ中将は骨のある武人なのも良かったです。{/netabare}

投稿 : 2017/06/04
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サンキュー:

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