みかんとラッパ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
考察もよし、楽し―!でもよし
ジャパリパークという、人間がいない世界。
そこにはいろんな「動物」がいて、
それぞれが縄張をもちながら、「フレンズ」という呼称で
互いに仲良く暮らしている。
たまに「セルリアン」という「敵」に遭遇し、
これをみんなで協力したりして倒しながらも
「楽し―!」な生活を送っている。
そこにみんなと同じように
二足歩行で言葉を話す「動物」があらわれる。
どうやら記憶を失っていて、
自分がどの「フレンズ」なのかわからないようだ。
耳も尻尾ない。翼もない。
特徴は「かばん」というものを持っているというだけ。
「君は、なにフレンズ??」
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このアニメに一種の恐怖を覚えた人も少なくないと思います。
話題になった点も含めて考えてみると、
どうも制作側に何かの意図があるようにしか思えなかったり、
幼児退行願望なるものが指摘されていたり、
このタイミングや、
最近のヒット作からの流れも踏まえて
色々と考えても、
ある意味すごい作品なんじゃないかと思いました。
勿論、アニメは考察されるためにある訳ではありません。
第一に、この「楽し―!」が日々の疲れを癒してくれます(笑)
「みんな疲れてんなー」が人気の秘密かもしれません。
純粋に、何も考えず、楽しめる作品です。
ここではあくまで個人的な感想として
それに加えて、
このタイミングということもあり、
私が感じた凄まじい恐怖についてから書きたいと思います。
まず、
かつての名作映画でも行われた、
パラダイムの転換から現状の概念を覆し、
人間様ありきのヒューマニズム(人間中心主義)に疑問を投げかける
という手法が恐怖の理由です。
かの有名な「猿の惑星」が代表例かと思いますが、
人間が優れているとされる
二足歩行・(思考・)言語能力について、
ほかの動物も同様に持っていると仮定すれば、
人間が地球の支配者たる所以は失われてしまいます。
これには本能的に凄まじい恐怖を覚えます。
「猿の惑星」も結局、支配者の座を猿に明け渡し、
「人間」は滅ぶという筋書きが用意されました。
この作品についても、
人間がほかの「フレンズ」同様に「動物」でしかない
ということが設定上で固定されています。
「フレンズ」はみな平等。
『「けもの」はいるけど、「のけもの」はいない~♪』
では、そうした時、
かつて「人間」だった「動物」がそのことを知らなかったとしたら…
それは相当なアイロニ―ですよね。
「セルリアン」を
「2001年宇宙の旅」の原作のモノリスにまつわる設定
(原作ではモノリスはある種のゲームになっており、そのゲームを
できる猿とできない猿とに選択する装置としての機能を持つ)
になぞらえる
意見も興味深いなと思いましたが、
この「ジャパリパーク」を
現実の、例えば
福島第一原発事故による20キロ圏内におきかえて考えてみると、
単なるアイロニーには終わりません。
問題は、「猿の惑星」の頃には
まだ「チェルノブイリ」も「フクシマ」もなかったことです。
「起こるかもとは言うけど、でも起こんないよ。」
で当時は済まされていたでしょう。
「シン・ゴジラ」と同じく、
「デブリ?大丈夫になるかもしれないよ。きっと冷えるよ。」
「君の名は」のように
「きっと大丈夫。待っててくれるんだ。」
希望的観測をもつ作品の流れもある一方で、
どうしようもない20キロ圏内。
どうにもならない。
人間はいない世界。
でもそこには取り残された動物たちが、
暮らしている。
そこに、なぜこんなことになっているのか知らない「人間」
が一人放り込まれる。
そこに優位性崩壊の概念を仮定し、
神の視点からすべてを知った私たちが見ていると考えると、
これはもう
人間自身による最大の自虐と反省としか言えません。
EDの廃墟となった遊園地も話題になっていましたが、
あれを見て、チェルノブイリだ、とか
20キロ圏内が、とか
考えてしまうと、
3・11以降特に、自分たち「人間フレンズ」ばかりでなく、
どれ程ほかの「フレンズ」たちにも迷惑をかけてきたことか。
しかも、そのことをもちろん知るはずもない
ほかの「フレンズ」たちは
あの20キロ圏内であろうとふつうに暮らしている。
「たのしー!」
人間が何をしようとも彼らが責めることは無い。
だが現実にこの「ジャパリパーク」で起きていることは
誰か個人でも、組織のせいではない。
「人間フレンズ」のせいなのである。
「なかったことにはならんのじゃー」
「これがこの国の正体かね」
となると「けものフレンズ」も
「この世界の片隅に」と同様の流れになるのでしょうか(笑)
些末な長文、失礼いたしました。