どらむろ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:----
本当の強さを見せてくれる、90年代ジャンプヒーロー
「大戦の最中(さなか)、わずか数十名の部隊で帝国軍を壊滅寸前まで追い詰めた集団があった
その名は忍空(にんくう)隊
かろうじて戦争に勝利した帝国府は彼らの力を恐れ、討伐に乗り出した
今、本当の忍空を知る者は少ない…」
(OP冒頭ナレーション)
週刊少年ジャンプの少年漫画原作、全55話。「幽☆遊☆白書」の後番組です。
忍術とカラテ合わせたような技「忍空技」を使う主人公たちが、悪の帝国軍と戦いながら、旅を続ける…。
勧善懲悪な王道バトルの一方、戦いだけではない優しさや心の強さを全面に打ち出したストーリーが魅力です。
独特過ぎるキャラデザ、ややワンパターンな展開などいくつか難はありますが、それ差し引いても90年代の不朽の名作の一角。
{netabare}『物語』
ジャンプアニメの中でも、原作改変が功を奏している良作です。
原作に比べ干支忍(えとにん。十二支の名を冠する忍者)の殆どが未登場でャラ層薄い一方で、原作の内ゲバ→アニメは帝国府との勧善懲悪でより分かり易いです。
主人公の風助たちが旅を続けながら帝国軍と戦ったり、行く先々で人々と心温まる交流をしたりする、ロードムービー。
世界観設定も良い感じ、現実の第二次世界大戦前の1930年代っぽい文明水準と、素朴に暮らす村や街が混在している感じ、そこに帝国軍の軍国主義的な圧政がありつつ…忍空は帝国から排除対象として狙われている。
テレビやラジオみたいなメディアが未発達な為か、文明水準の割には牧歌的な雰囲気が特徴(でも圧政でぶち壊される)
ロードムービーなので行く先々でゲストキャラと交流したり、時に心温まる、時に悲劇的な話もありつつ、主に帝国軍の三将軍(というか大佐)バサラ、アシラダ、メギラが放つ刺客とのバトルが続く。
風助、藍朓(あいちょう)、橙次(とうじ)の3人の忍空隊隊長格は強いけれど、敵はもっと強いので苦戦が多い。
難敵に苦戦→何とか隙を見い出して逆転なパターン多し
戦力的には格上だけど、仲間との絆や感情欠落しているのは真の強さじゃない!と示してみせた、忍空狼三人組とのバトルも名勝負だった。
風助たちは基本「不殺」なので、あまり殺伐としてないのも良い感じ。
でもゲストキャラに犠牲者が出る悲しい話も多い…。
特に序盤の方に、風助が母の面影を見た女性たちの話が切ない。
孤児院のマザーの優しさ、帝国軍特殊部隊の女性隊員沙也香(さやか)の、風助暗殺の任務と息子の面影を見た愛情との板挟みなど、母性や優しさが帝国の非道に踏み躙られる重い展開も。
どこまでも純真無垢で心優しい風助の尊さが際立ちつつ、憎しみよりも悲しみの方が強い…
ここら辺ややフラストレーションたまるのですが、一貫して非道な暴力にも優しさ見失わないのが真の強さ的なスタンスを貫いているのが尊い。
行く先々で一貫している風助たちの行動で、人々が僅かずつでも時代の壁(優しさ見失っている帝国の圧政)を乗り越えていく感じが、本作の見所かも。
さほど深刻でなくても、心の弱さ抱えているゲストに、風助たちがちょっと後押しする感じの良エピソードも多い。
やはり「本当の強さとは優しさ、思いやる勇気」清々しい。
「昨日の敵は今日の友」少年ジャンプの王道もバッチリ、特にツンデレなアシラダ大佐の軍勢が最終決戦に駆けつけてくれる終盤大いに盛り上がった。
三将軍の中ではアシラダが一番好勝負してたので(他二人は実力差ありすぎたり、中々直接対決しなかったり)
…もうちょっと派手に活躍してほしかったですが。
50話が実質最大の山場、以降の5話はおまけ的な話で、しかもスケールもテンションも微妙。
まあ、おまけとして見れば…。
総じて長期放送(55話は長期か微妙ですが)で寄り道的な話も多いものの(風助迷子や橙次の飛行機墜落はお約束なので良し)、熱いバトルと心温まる話と若干コミカルな話バランスが良く、全般的に目的が分かり易い(母を探す→バサラに勝てないから強くなる方法探す→ラスボス打倒目指すなど)
色褪せない名作で間違いないのですが…
一方で風助たちは既に隊長格で完成され過ぎている、劇的に(戦闘力が)成長する展開も無い(パワーアップイベントは27~29話の天空龍の話くらいか)。
忍空技がワンパターン気味で後半やや地味な印象(22話のアシラダ戦辺りがピークかも)
その為か、戦闘面でも人格面でも、劇的なカタルシスは欠けていたのが難かも。
瞬間風速的に一番盛り上がったのが、最終決戦前にアシラダが駆け付けてくれたシーンくらいしかない。
…ここら辺の地味さが、幽白やナルトに人気で水をあけられている理由かも。
いや、十分面白いですけど。
物語評価は迷いますが…時を経て観返しても安定して楽しめたのはやはり作りが良い証、「地味な名作」という事で。
『作画』
キャラデザはイマイチ。
カエルみたいな風助は味があって好きなのですが、他2人は微妙なイケメン、紅一点の里穂子はさほどかわいくない。
風助母のヤマブキが一番美人だったような。
バトルやアクションは90年代の中ではかなり魅せてくれる。
スピーディーかつカッコイイです。
世界観描写や帝国軍の兵器描写も何気に良い感じ。
『声優』
風助の独特な感じ、松本梨香さん抜群のはまり役でした。
ポケモンのサトシ、おぼっちゃまくんの貧ぼっちゃまと並び代表役か。
藍朓の真殿光昭さん、橙次の小杉十郎太さんの若く二枚目半な演技も絶品です。
林原めぐみさんのやかましい感じも流石。
ゲストキャラや敵側も非常に豪華。
『音楽』
OP主題歌「輝きは君の中に」が名曲。風助が一貫して見せてくれる本当に大切なモノは何かを、ちゃんと歌詞に込めている。
3つのEDいずれも良いんですが最初の「それでも明日はやってくる」が好き。
BGMも良い、一部に幽遊白書と同じ曲使われてます。
『キャラ』
純真無垢な子供でどこまでも真っ直ぐに心優しい風助は、ジャンプヒーローとして申し分なし。
強さ(戦闘力と優しさ)と、子供っぽい幼さ併せ持つ、不思議な主人公でした。
…好きなキャラではあるのですが、人格面で完成され過ぎている気がしました。
「信念を貫く子供など、薄気味が悪い」(カテジナさん)
ちょっと意地悪な見方かも。
仲間の藍朓と橙次もしっかりキャラが立っていて、戦闘面でもコメディー面でも良いキャラなんですが、個別エピソードはあまり目立たない印象。
橙次はフンドシに裸というインパクトがw
30歳という大人なのは意外。精神年齢が12歳の風助とあんまり変わらないような…
怪力ペンギンのヒロユキ、橙次の妹の里穂子が旅の仲間としてドタバタな雰囲気に一役買っていた。
里穂子はあまり役に立っていないと思いきや、かなり後の話で、兄の飛行機を整備しているのは彼女と判明、里穂子がいなければ旅が出来なかった…
もっと早くそういう描写いれて欲しかった。
旅の仲間達よりも、アレクの方が、風助と交流していて印象的。
幼いながら将軍としての自覚をもって戦った、風助の友。
三将軍ではアシラダが一番きちんと武人&軍人としてまともに立ちはだかったので好き。
バサラは勿体つけておいて微妙、バサラ三獣士の方が良い敵だった。
メギラは亡国のお姫様属性が加わり終盤ヒロイン度アップ。
その他の敵は洗脳や思想教育された使い捨て多いのが難。
コウチン大僧正は強さはラスボス級なんですが、どうにも地味な印象が。
いじめられっ子でバカにされていたが持ち前の博識で活躍する少年ゆうじ、飛行機乗りの老人など、ゲストに良キャラ多し。{/netabare}