岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
叫びは残響となり得たか
オリジナル作品で全体的に社会派色が強い。テロや原子爆弾など現在社会に関連した問題を孕んだ、かなり突っ込んだ内容の作品。メインの2人が爆発テロ(特に最終話の原子爆弾の爆破など)や、物語で明かされる政府が行った許されない計画の実情など、かなり大きな規模で物語は進んでいく。
そうした突っ込んだ内容に目がいきがちだが、この作品の最も訴えたい部分はメインの2人の、人間としての孤独や叫びであったと思う。
それはとても小さな単位の問題でもある一方で、同時に社会全体を震撼させるほどの大きなエネルギーにもなり得る。それがテロリズムの本質の一側面ではないかとも感じるが、だからといって彼らの行為が許されるものでもないのだろう。ただ今の時代の中で生きる、人間の悲しみや苦しみ、存在の証明という根源的で切実な叫びが、「残響のテロル」というタイトルやテーマに込められている気がしてならない。
キャラクター描写は全体的にあまり掘り下げられることはなかったが、特にメイン2人が深い悲しみと孤独を抱えている様子は十分に見て取れた。ヒロインの女性に関しては、彼女の存在意味がなかなか汲み取れなかった。今の時代を生きる一人の女の子でもあり、メインの2人にとっての人とのつながりの象徴、過去の記憶を思い出させる装置的役割。あるいはナインたちが生きたことの、語り部的な立ち位置も担っていたのではないか。いずれにしても声優さんの声のお芝居は素晴らしかった。
物語のカギを握るスピンクスの由来や、それにまつわるクイズの流れは正直あまり楽しめなかった。題材に少々上滑り感があり、爆発やハッキングを二人でこなすというのもさすがに非現実的。またそれに対する警察の対応も基本的に柴咲一人で解決という流れはやや単調だったか。そのようなご都合主義が許される土台が、十分に完成されていなかった。
そして衝撃の最終話。まさか原子爆弾が本当に爆発する展開になるとは思っていなかった。が、上空での爆発に不謹慎かもしれないがある種の美しさを感じてしまった。本当にこの企画で放送出来たなと純粋に驚いた。原子爆弾が爆発した後の、青空の下で楽し気に遊ぶ3人の演出は非常に印象的だった。
社会派としてオリジナリティーや突っ込み具合というピースは揃っていた挑戦作。ただストーリー設定がどこか上滑りをしていて、うまく作品に入り込めなかった惜しい印象の作品。個人的には同系統の作品でノイタミナなら「東のエデン」のほうが好みかな。