退会済のユーザー さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
本当に作りたい作品作りに没頭した結果
けものフレンズの視聴完了。
結論から言うと、とても素晴らしい作品だった。毎回楽しく視聴させてもらったことに感謝したい。
しかし、若い人がこのアニメを今まで観たことのない作風だと言うのは驚きだった。
確かに。昔は直球ど真ん中の作品ばかりだったのが、段々とハズしたり、裏と言われる作品が多くなってきて王道的なのが少なくなってきたのと、特に深夜アニメでこれをやったのが大きいかも知れない。
最近は奇をてらっただけの作品や、他の誰もやってない設定探しのみに腐心した、単純に面白くない作品が増えてきた中で、このけものフレンズは確かに異色だったのだろう。
作品の魅力を述べたり分析考察等々は様々な方がされているので、私がしつこく言うのは避けたい。
違った見方で見るのならば、このアニメは「邪気」が無いから多くの人に受け入れられ、心を動かしたとも言える。
私は備前焼の収集が趣味である。備前に限らず白磁青磁和洋様々な焼き物を集めているが、特に備前を好んで集めている。
何年か前、とある備前の大家の家にお邪魔してお話しを伺った時に、その方は「邪気をなくさなければ良い作品は作れない」と仰っていた。
「こうすれば売れる」「そうすれば人気が出る」と考えて作られた作品は、本物とは程遠い出来だそうだ。
その自分との戦いを、自戒を込めて「邪気」と表現したのだ。
芸術家とは、職人とは、こうあるべきなのだ。
勿論、野望を持って作られたものを否定するわけではない。それはそれでとても素晴らしいものだ。
ただ、けものフレンズは私が観る限り、バリバリの商業主義的な萌えアニメなどに見えるアザトサやイヤラシサなどが感じられなかったのも大きい。
またCGアニメーションも良かった。
不出来だと批判する方は、白磁の完璧過ぎるスタイルを好まれる方だろう。
それはそれでいいが、備前焼に代表される素焼きー特に手捻りの焼き物は全て形が違うし、焼き加減によって景色も異なる。
千利休をはじめ歴史上の様々な偉人が愛したワビ・サビである…とまで言えば大げさだが、チグハグなアニメーションに温もりや親しみ易さを感じ、大いに楽しむ事が出来た。
とにかく、色々な人が夢中になるのも分かる、非常に素晴らしい作品だった。最近また流行りはじめてきた「セカイ系」作品からの脱却という意味でも、アニメ界の転換期の一翼を担うのではないか。
この作品を世に送り出したスタッフの皆さんに拍手を送りたい。
あと1つ余計な一言を。
皆、冗談で言っていると思うが「IQが下がる」とか「頭が溶ける」とか、マジメにそう思っているのならとんでもない。
この作品は布石の置き方などは良く練られている。
本当にIQが下がる作品とは、最近で言えば大友啓史監督の「ミュージアム」や、園子温監督の「みんなエスパーだよ!」を言うのである。
あれこそ「馬鹿の、馬鹿による、馬鹿の為の作品」なのであって、けものフレンズにそんな批判は当たらない、ということを強調して、締めの言葉に変えさせて頂きたい。