めいろ* さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
花びら5枚、私たちみたいだね。
本作品が大ヒットした背景に、一体何があるのか全く見当がつかないのです。
ほんのちょっと新鮮味のある日常アニメ、けいおん!ですが、放送当時の爆発的な人気は、ちょっと新鮮味のある日常アニメでは片づけることが出来ないレベルのものだったと思います。
このレビューを書いているのが2017年の3月ですから、本作品の一期放送は今から遡ることおよそ8年前の作品になるわけです。
8年前の作品と聞いて、ずいぶん経ったなあ。と思ったでしょうか。
僕的には、そんな最近の作品だったっけ。という感覚です。
本作品の特徴は、タイトルにもある通りですが、軽音という音楽ジャンルを取り入れたキャッチーな作風だったと思います。
軽音が部活になることで、当時学生の方々にとってタイムリーな環境一致で、しかも涼宮ハルヒの憂鬱という作品がヒットしてから3年?程になりますから、コスプレイヤーという文化が確立されたりと、ある種そういった”萌え”系の文化が丁度浸透してきた頃だったと思います。
そういった時代の波に上手くはまった事は、本作品の爆発的人気を助長するものの一つだったと思います。
しかしどうでしょう。改めて本作品を今、もう一度見てみると当時の波に起因しない純粋な作品の評価をすることができるのではないでしょうか。
はっきり言って、本作品は時代の波なんかまったく関係なく、作品そのものが特別に秀でたものだったと思います。
当時の僕は、ただ女の子が軽音部でバンドを組んで、有り得ない上達スピードで次々とバンドとしての成功を修めていく短絡的で簡素な作品だと思っていました。
もちろん、当時の僕と言うのは高校生になったかならないかくらいで、作品の本質は棚に上げて、大衆性のあるものを嫌って独自性のある主張をしたがる時期だった事が恐らく原因でしょう。
いつの日だったか、なんとなく2回目の本作品を見た時、全く違う作品を見ているような感覚を僕は感じたのです。
作品の本質を見るという事が、初めて作品を見るという事になるのだとその時強く思いました。
題名に回帰します。
「花びら5枚、私たちみたいだね。」
主人公である平沢唯の台詞ですね。
部活組織と言うのはなんとなくグループ主体で進行して、ストーリー的な事も組織体で共有して進行していくきらいがあります。
もちろんこれはスタンダードな進行で、その題材の本質を捉えているとは思いますが、本作品の進行方法とはちょっと違うと思いました。
基本、本作品は5人で前へ進んでいくような話ではありますが、いつだってその主体になるのは主人公である平沢唯です。
小さいきっかけも、大きなきっかけも、唯の主体性に伴って物語が進行して、それに付随してほかの4人が後を追ってくるのです。
考えてみると、唯が自分本位な理由でその場に留まってしまう事は一切ありません。
いつだってみんなの太陽で、そのふわふわと宙を漂うようなキャラクターに心惹かれているのです。
唯の、5人みんなで軽音をやる!という想いは、なんだか定義が広くて、曖昧なものに思ってしまいがちですが、実は定義なんかなくて、その想いだけで充分に明確なものなんですよね。
きっと本作品にあるのは、5人の少女が軽音を通じて仲良く楽しい日常なんだと思います。
しかしその本質は、5人が軽音を通じて、平沢唯を通じて、どんな想いで日常を繰り返して、あるいは、何を想うのか。
美しい日常とは、決して華やかである必要はありません。
みんなが笑っていられる事が、その理由が、美しいからなんだと思います。