「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 炎龍編(TVアニメ動画)」

総合得点
83.7
感想・評価
1245
棚に入れた
7519
ランキング
315
★★★★☆ 3.8 (1245)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

尺とテンポ。(ネタバレ全開です)

アニメーション制作:A-1 Pictures
2016年1月 - 3月に放映された全12話のTVアニメ。

原作は、柳内たくみによるライトノベル。
分割2クールの2クール目です。

【概要/あらすじ】

西暦200X年。
突如「門」が銀座に現れ、そこから侵攻して民間人を無差別に殺戮した異世界の「帝国」約6万人の軍勢は、
自衛隊らの活躍によって壊滅した。日本政府は「門」の向こう側の世界に自衛隊の陣地を構築し、
主人公の伊丹耀司率いる第三偵察隊に、門の向こうの世界(特別地域=特地)の内情を探らせた。

「特地」とはファンタジーでお馴染みの様々な種族が混在し、魔法やモンスターの存在する世界である。
未発見であったり、現地人がその価値を理解していない資源が大量に眠っている可能性が高く、
利権目当てに「特地」に介入しようとしているアメリカや中国、ロシアなどの干渉で日本は微妙な立場にある。

自衛隊の活躍で異世界「特地」にてコダの村民を「炎龍」から護り撤退させて、現地人との信頼関係を築くことに成功。
その過程で伊丹は、エルフの娘テュカ、魔導士レレイ、亜神ロゥリィと親交を深めた。
さらにイタリカ防衛戦で「帝国」の第三皇女ピニャと知己を得て誼を通じ、
東京での同行を経て皇女は「帝国」が置かれている現状を把握。

「帝国」に文明と軍事力の格差を理解させ、「帝国」の人間を日本シンパに取り込むことで、
日本側に有利な条件で講和の道を模索。

そんな中、ダークエルフの女ヤオが救いの手を求めて、
自衛隊が駐屯し都市にまで発展した地アルヌスを訪ねてきたのだった。
曰く「炎龍を倒して、部族を滅亡の危機から救ってくれと」

(1クール目は、ここまで)

【感想】

原作既読者からは早足展開らしくも、漫画版と比べるだけでは違和感なく終わった1クール目。
2クール目はタイトルが示すとおりに、まずは炎龍討伐から。

自衛隊が駐屯するアルヌスの難民キャンプに「PX(購買部)」を開設。
→ 大繁盛 → 人手不足 → 経営規模拡大 → 特地の商人が群がる
→ 要望に応じて商取引する → 雇用拡大 → 人が集まる → アルヌスが都市にまで発展する

この過程をアニメで楽しみたかったのに詳細にやらなかった等、
1クール目も惜しい部分があるものの一応は高評価として続きを視聴開始。
もはや、間違い探しのためにアニメを観ているような感覚w

2クール目も、構成の違いや皇帝との謁見の時に余震が起きなかったなど差異はあるものの、
楽しめていました。

しかしながら、炎龍討伐に向かってからがイマイチかな?
シナリオ上の役目を終えた途端に、エルベ藩王国の王であるデュラン(隻眼の人)の登場シーンを全部削除。
よって国王デュランの道案内で炎龍討伐に向かう自衛隊の進軍過程が全て割愛されている。
尺とかテンポとか言いつつ削除まみれは良くないような?

更に炎龍との決戦中に戦死したダークエルフのセィミィの亡骸の瞼を閉じて、
彼女の頭をそっと撫でる伊丹の台詞「行ってくるぜ」

凄く良いシーンなのにカットしたアニメスタッフ、なんにも解ってないな?と思い始めたり。

炎龍の真相を知ったヤオが棄教してロゥリィの信徒に改宗して、それに伴って名を改めたり、
伊丹がテュカ絡みを通じて自身のトラウマに向き合って母親に会いに行く部分もカット。
どうにも、ストーリーを繋げるために必要なパートだけ抽出して残りは捨てるという方向性になったような?
1クール目は、そのへんはまだ余裕のあるシリーズ構成だったのになんたることか?

炎龍討伐後に魔法都市ロンデルに向かう間に「特地迷宮攻略編」があるのですが、そこもアニメではスキップ。
後付で本編に組み込まれたので、あってもなくても良かったのかも?
しかし、そのせいでダークエルフのヤオの出番が減ってしまったような?

魔法都市ロンデルでレレイが杖で空を飛んでいたりと、(原作では魔法で空を飛べないと断言している)
切ったり変えたりする意味があるのか?と徐々に気になる部分が増えてきた感じ。

細かい差異を気にし過ぎも良くないとは思いますが、アニメ版で特に首を傾げたポイントが三つあります。

・冥府の神ハーディが降臨しない。
 この作品世界の真理に迫る重要なキャラであると思われるのですが、
 続きの伏線になりそうな要素が投げっぱなしになるのを避けるためかアニメ版では省略。

・作中の敵対勢力である第一皇子一派が安悪党でしかない。
 第一皇子ゾルザルは、アニメ版では一貫して幼稚で尊大な馬鹿殿ですよね。
 あれはあれで部下には人望があるし、自分の理解できる狹い範囲では他人への気遣いができるし、
 権力者は清廉であるべきと思っていたり帝国の悪弊にメスを入れようとしたり、
 一概に無能であるとは言い難い人物なんですよね。本当は。

 父親への恐怖心や自身の身分が高すぎる出自故に歪んでしまった弱い人間であり、
 権力志向が強い小心者であり、女を性奴隷にしていたりと、
 短所が長所を大きく凌駕する故に差し引きでマイナスなのですが、
 アニメでは尺の都合とやらでゾルザルの良い部分が全部消え失せているがために脚本の犠牲者なのですよね。
 悪いことばかりしてるけど憎みきれないバカ → 生きてる価値が無い本物のバカ。

・ヴォーリアバニーの一族の扱いが雑。

 帝国のゾルザル皇子によって滅ぼされて離散した一族。
 男が滅多に生まれない一族の性質ゆえに他の種族から偏見と好奇の目で扱われていることがアニメでは描かれず。
 国が滅びた後にデリラが受けてきた悲惨な過去がアニメでは描かれていないがために、
 デリラの元女王に対する憎悪の深さが伝わりにくいですね。

 ゾルザル皇子に侍っている元女王テューレも帝国に騙された被害者でありながら、
 一族からは裏切り者と憎悪を一身に背負い苦しんでいるのですが、
 そのあたりの彼女の事情・心情描写がアニメでは強調されていません。
 日本人の古田と接することでテューレが心の安らぎを得るのですが、
 それもアニメ版では全く無くて本当に悪女でしかないように見えます。
 最終回でフォローが少しあるのですが、あんまりだと思いました。

アニメ版最終回後に、日本の敵は帝国第一皇子派だけならず、中国の工作活動を相手にすることになるのですが、
中国の叩かれ具合に配慮して当該部分のアニメ化を断念したのか、
そこに行く前にアニメでは改変を加えながら区切りの良いところで最終回にした感じですね。

尺の都合、構成の都合で見たかったシーンが軒並み削られていたり、
人間描写が薄くなっていたりして群像劇として弱くなっていますね。

また、軍事監修の人が頑張った反面、中世の軍隊の監修がいないために、
自衛隊の活動の細かい描写 vs 皇子派の軍の雑な描写 が対照的。

そして最後が、強い自衛隊無双エピソードで終わってしまったがために、
他のメディアで観る以上に自衛隊の宣伝アニメ以上の価値が見出しにくく終わってしまったことが残念でした。

アキバ系の偏った日本文化が帝国の貴族社会に浸透していく様子とか、
アルヌスの街の人々のコメディが描かれている漫画版の方が面白いと個人的には思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2017/02/25
閲覧 : 425
サンキュー:

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