「灰と幻想のグリムガル(TVアニメ動画)」

総合得点
87.5
感想・評価
1965
棚に入れた
9454
ランキング
152
★★★★☆ 3.9 (1965)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

赤緑 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

地味さが良い 見どころはバトルではなくパーティーの成長

※ちょっと長め(本文は2,800文字程度)

異世界転生RPGもの。バトルもつまらなくはないけど、正直、見どころはバトルじゃなくて、パーティーの成長。
そして、無人島ものみたいな、非日常が舞台のドラマが好きな人向けの作品だろう。
地味だけど、私はこういう話がとても好きだ。

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ラノベ原作。
ネットゲーム(MMORPG)の異世界転生もの。つまり、『ログホラ』や『オーバーロード』のようなタイプの舞台設定。
本作がそれらと異なるのは、ゲーム部分がほぼ残っていない、リアルな世界であるということ。ただし、魔法や技の概念はある。
そして、ゲームのキャラクターの能力ではなく、プレイヤー自身の能力が反映されているらしいということ。
ただし、{netabare}転生したと思われる人物はみな記憶喪失のような状態で、元の世界がゲームだったことは明言されず、彼らのセリフから仄めかされるだけである。また、彼らがプレイヤー自身であることも仄めかされている。
少なくともアニメではこの辺の詳細は明かされていない。
{/netabare}

そんな世界だから、ケンカが強いとか運動神経が抜群だとかで、現実世界でもそれなりの大きさの動物を仕留められるような能力のある人間なら、初っ端から第一線で活躍できる可能性がある。
だが、多くの平均的な人間は、そんな能力を持っていない。かと言って、強力なリーダーシップがあるわけでもなし、特殊な技能があるわけでもなし。
主人公の属するパーティーは、そんな平凡な若者たちで構成されている。

バトルとなれば、最も格下のモンスターにすら攻撃を当てることができない。
ダメージを受ければ、損傷部分に傷を負って、部位によっては行動の制限を受けたりする。
もちろん、致命傷を受ければ死ぬ。
命がかかった戦闘に慣れていないから、恐怖との戦いでもある。
これは、現実世界のジャングルで野生動物相手にサバイバルするようなものだ。

そして、経済的な問題もある。モンスターを倒さなければ、食い扶持を稼ぐこともできない。

そんな過酷な世界に投げ出された主人公たちの命運は如何に・・・


といった設定が特徴の作品である。

もしも、現実世界の人間がRPG世界に行ったらどうなる?というのを考えたことがある人は少なくないはず。
本作の設定の一部は、それを地でいっている。
(余談だが・・・アニメじゃないけど、『スーパーリアルRPG』みたいな解もある。)

こんな設定なので、派手なバトルとか急展開とか俺Tueeeとかを期待する人には物足りないかも知れない。
逆に、そういうのが逆に物足りないと思う人には向いているかも知れない。


おまけに何につけても一筋縄ではいかない。人間関係に苦労する話が多い。
でも、無双する主人公が多い昨今の作品の中では、キャラクターが身近に感じられて良いと思う。
無双する主人公は、いわばスーパーヒーローや超人の類であって、共感対象ではない。
この作品は、ファンタジーでありながら、学園コメディーと同じような部分もあるのだ。無人島に遭難する話にも似ている。

こういう、ドラマ部分が面白い作品と言える。
それに、特定の人間だけが強くなるのではなく、狩りや人間関係の苦労を通して、パーティーとして成長していくというのも良い。


キャラについて。

主人公パーティーのメンバーは、大半が優しいというか大人しくて無個性のタイプだが、一人だけ異質のランタというキャラが出てくる。
こいつが曲者で、一言でいうとイヤな奴である。いちいち反抗的な態度を取ったり、実力に見合わないことを言ったりする。実力は他のメンバーと大差ない。
こいつはこういうタイプの物語で味方として出てくるのは珍しい気がする。学園ものに出てくるタイプか?
通常世界だったら、疎まれてハブにされてもおかしくないが、そんなことを言っていられる状況ではないので、皆ガマンしている様子。本人はお構いなしのようで、どうにも腹の立つ奴だ。
だが、こいつが今後どういう風にパーティーメンバーと折り合いをつけていくのかが気になった。憎まれっ子世に憚るというし、死にはしないと思うけど、丸くなりそうもない。

こういうキャラを嫌いな人は多いだろう。私も好きじゃないが、実際の社会には得てしてこういう人間がグループに1人はいるものだ。ドラマを重視するこの作品には不可欠な存在だと思う。


ネタバレを含む具体的な内容について。

{netabare}
中盤からはパーティーのメンバーもみなそれなりに強くなるので、最初に思っていたよりも早くまともに戦えるようになる。
そして最後の最後では、大金星を上げる。これが無いと流石に締まらないだろうから。

実は、ランタは思ったより使える。性格は変わらないが、戦闘で積極的なのと値切るのが上手いのでかなりパーティーに貢献している。だが、相変わらず協調性は低く、たしなめると正論で返される。

スキルも基本的には地味である。
個人的願望でしかないが、スキルはもうちょっとゲームっぽくない設定にしてほしかった。具体的に言うと、コマンドで選んで発動しているように見えてしまっているのが残念。例えば、そのスキルを裏付ける強化ポイントがあって、それによって発動可能になった、くらいまでしてくれたらゲームっぽさが薄れたのでは。
精神が乱れて回復魔法が使えない、というのは設定的には良かった。(悲しいけど。)
唯一、主人公らしい派手さと言えば、スキルではないがクリティカルヒットの可視化みたいなのが出てくる。

ソルゾが食べたい。(この世界のラーメンのこと。)

私服のメリイさん超かわいい。
{/netabare}


《総合評価》

地味ではあるが、異世界転生ものの中では、私はかなり好きな作品だ。
全体的にクオリティー高いが、特にドラマ部分を評価。
よって、物語とキャラの点数を高めにした。


物語:
設定ありきで話は地味なので、物足りないと感じる人もいるかも知れない。
私は、淡々とした雰囲気が本作の良さだと思う。

作画:
無個性な絵柄だが、作画は安定。たまーに、手抜きっぽいのがあったけど(歩いているシーンで足が動いてなかったり)。
背景や小物とかの絵が絵画調なのは味がある。
戦闘シーンの止め絵は、もうちょっと少なかったらもっと良かった。
横顔のときに口がちゃんと顔の向いている方向に開く。

声優:
吉野さんはこういう役だけではないが、これはGJ。
主人公パーティーのメンバーは、普通の若者感が出ている。
能登さんのキャラもいい。

音楽:
良い意味でアニメっぽくない曲が多い。劇伴はボーカル曲もある。
OP曲はそうでもないが、ED曲はちょっと好きかも。挿入曲が熱いシーンがある。
音楽じゃないけど、監督が音響監督兼任しているのは、音にこだわりがあるってことか。

キャラ:
ラノベっぽくない、普通の若者といったキャラが多い。
イヤなキャラも含めて、地味だが個性豊か。
女の子が可愛い。


▼▼ 更新履歴 ▼▼
2017-02-19 08:38 新規
2017-03-11 体裁と細部を修正、いくつかの箇所に加筆

投稿 : 2017/03/11
閲覧 : 313
サンキュー:

24

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