なばてあ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
30年越しのラストシーン
ミリタリ描写については世評のとおり、見応えがあった。キャラクタの作画を精密に描くことで醸しだした塹壕戦の圧迫感、CG撮影を重厚な考証をふまえて洗練させた空中戦の空気感は、際だってさえいた。
{netabare}最終話、魔女同士の対決において、列車や戦車がそのまま物理的な投擲武器として使用されるシーンが印象深い。CGで緻密に作り込まれたオブジェクトが縦横無尽に動きまくる場面は、手描き作画とCG撮影という異質な歯車が絶妙に噛み合わさった名場面と言っていい。戦闘シーンにつぎ込まれたコストが、充実したアウトプットに収斂していることに、興奮と安心を禁じ得ない。が、一方で、とりわけ物語後半の日常(とはいえ戦時中にはちがいないのだけれど、要するに戦闘シーン以外の)シーンにおいて、作画がやや雑になっていたのは気になる。致し方なかったのもわかるけれど。 {/netabare}
軍事だけでなく政治もしっかり描ききろうとした点もおもしろかった。優秀な兵器としての魔女がそのまま将来の政治的リスクに転化されていく展開は、たしかにアニメの爽快感を削ぐ、粘性の高いプロットだけれど、この重たさはあらかじめ戦闘シーン(の兵器の挙動)を写実的に描いていたことでうまくサポートすることができている。その意味で、透徹したグランドデザインの勝利とも言えるだろう。
{netabare}ラストシーンのイゼッタは、ちょっとカミーユ・ビダンを思い起こさせる仕上がり。それでも、その彼女をフィーネ(つまり、ナカのヒトがカンペキすぎたプリンセス)が訪ねてくるプロットが救いになった。そのフィーネとイゼッタを同じフレームに映さずに終わることが切なくもあるけれど、だからこそそこに余韻が生まれる。総じて隙のない演出。だからこそ、終盤の作画の乱れがひっかかってしまうのだけれど、でも昨今取りざたされる「詰んでしまった」アニメ制作環境に鑑みるなら、そこをあげつらうのは残酷なのだろうか。イゼッタに何もかもを求めてしまう作中の各国首脳部のいびつさが、ブーメランになってしまうよう、で。{/netabare}
衝撃:★★★
独創:★★☆
洗練:★★★☆
機微:★★☆
余韻:★★★