橙色特別室 さんの感想・評価

4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

結局どうしたかったのか

タイトル通り。観終わった後に、結局何がしたかったのだろう、と思ってしまうアニメ。恋愛なのか、友情なのか、はたまたどっちもか。多感な思春期の心の動きを描きたかったのか…。完全に、終わりよければ全てよし、という感じですよね。商業的な価値しか求めないラノベやアニメの限界をみた気がします。

たぶん、演出やらが良かったんでしょうね。続きが気になって一度に全部観たいと思える作品です。ただ、視聴後に何が良かったか答えろといわれても頭を悩ませます。後に何も残らない作品、と形容するのがぴったりかもしれません。

不満が残ったのは、主人公と付き合いかけた？女の子の扱いで、とにかくかわいそう過ぎます。川に落とされ、人格崩壊させられ、他のヒロインの当て馬扱いに格落ちし、最後は破局って…シェイクスピア並みの悲劇です。ハムレットのオフィーリアもびっくりでしょう。あれだけ惨めな目に合えば、そりゃあ視聴者は心を痛めて辛くなりますよね。最後は、自分のしたいようにする、という感じで復活し、「ハッピーエンドでよかったー」という達成感を巧みに押し付けています。この落差の使い方は上手いですが、胸糞悪いです。私には原作者かラノベの編集者が、読者の反応をみてヒロインを変えていたようにしか思えません。

敵役がどうのとか、終わり方が曖昧なのは別に気にならないのですが、気になることがひとつ。これは本当に心を描けているのでしょうか？ たぶん、少しひねくれた人なら首を傾げると思います。シリアス展開も私は笑ってしまいました。いくらなんでもみんな衝動に駆られ過ぎで、克己心はないのかと言いたくなります。アニメなので、キャラの性格は言及しません。しかし、各章の終わり方も、敵役の突発的な行動によって仲直りしたり、急に母親が強くなったり、ピーチ姫みたいな展開になったりして片付いてしまい、これでは怪奇現象の必要性がまるで感じませんでした。みんな善人で仲良し、という解決で無理やりまとめるのなら、上記した辛いシーンなんて必要ないです。同情を誘っているようにしか見えません。

一言でまとめると、どこまでも中途半端な作品です。ホラーか恋愛か人間心理か、ジャンルを絞って欲しかったところ。これだけ人の心を説いておきながら哲学的な部分にも触れず現実味もないのは違和感を覚えます。キャラや曲は良く、楽しい部分も多いだけに残念に思います。