「鬼平(TVアニメ動画)」

総合得点
71.7
感想・評価
251
棚に入れた
928
ランキング
1297
★★★★☆ 3.7 (251)
物語
3.9
作画
3.6
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.8

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Kuzuryujin さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

単なる勧善懲悪の枠に収まらない魅力ある作品

時代劇が大好きだった父は、
実写ドラマの「鬼平犯科帳」を
毎週欠かさず観ていたような記憶がある。

私は当時、時代劇と言えば、
「水戸黄門」、「遠山の金さん」、「大岡越前」など
勧善懲悪のパターン化された内容ばかりという偏見が強く
たまに観て面白いとは思えても嵌ることはなかった。
そんな中、居間で流されていた鬼平をまともに観た覚えはない。

以上の理由で名前だけは知っていた鬼平。
アニメでの正統派の時代劇は珍しいので
試しに観始めた。

読んだことはないが
原作小説の力の大きさか?
人間ドラマとして秀逸なのが魅力。

初回から掴みはよかった。
年齢を重ねた今だからこそ訴えかけるものがある。

しかし、第四話まで観た時点では
ワンパターンで途中で飽きそうな予感もあった。

しかし、ユーモアもエスプリも効いている
第五話「谷中・いろは茶屋」以降
大好きな作品になった。
今回のメインキャラは、人間としての弱さの描き方に
愛嬌があって憎めなく、非常に微笑ましい。

人は誰でも過ちは犯すし、
人に言えないような恥ずかしい過去が
大なり小なりあるものだ。

悪党にも悪党なりの矜持があったりと
原作者は人間理解が深いし、
人間を愛してるんだと伝わる。
蓋をしたい人間の愚かな側面の
描き方が心に響く。

単純な勧善懲悪ものなら
大抵がハッピーエンドになりそうなものだが、
現実のように時に救いようがないときもある。
そのビターな味わいが大人向け。

因果応報、諸行無常、諸法無我、一切皆苦といった
仏教的な価値観でみると味わい深い作風。

かと思えば、密偵たちのように
身の過ちは宣り(のり)直して改心すれば
過去を不問にして真っ当に生きられる道も
与えられるといった神道的価値観もあるのが
心の琴線に響く。

<音楽>
OPの、おそらく実写版をリスペクトしつつ
ジャズ風味にアレンジしたインストがオシャレ。
BGMもオーケストラ主体の味わい深いもの。

またEDでの主題歌
『そして・・生きなさい』
歌謡界の超ベテランの
由紀さおりさんの歌声が
古き佳き時代への郷愁を呼び起こす。

<鬼平の今作での魅力>

滅多に激昂することなく
清濁併せ飲める成熟した大人。

中の人、堀内賢雄氏のあまり芝居掛かってない
脱力気味で穏やかな自然な演技から
滲み出る包容力、達観した大人の落ち着き…
鬼平の人柄に惚れ惚れする。

ビジュアルも細面で痩身なのもいい。
引き締まって無駄な肉がないのは、
いかにも剣術が強そうである。

第九話、若いときはやんちゃして、
悪事に加担しそうだった過去まで描かれていて
キャラとしての深みもますます深まった。

そして、第十一話。
人としての度量の大きさに感動。
密偵たちが親方に心底惚れるのも納得。
男女の仲は相手次第で人生の明暗が大きく分かれる。
このテーマは第二話にもあったが、
鬼平の奥方にもそれが当てはまるドラマがあったたとは…

<実写からアニメへ>

表現方法は変われど
普遍的な人間の業をストレートに描く
情緒あふれる伝統的なドラマが今でも制作され続けること。
日本もまだまだ捨てたもんじゃないと思う。

原作小説は話数が全135作。
アニメでは全13話、おそらく人気あるエピソードばかり。
1話が24分の短い尺にもかかわらず最後まで上手くまとめている。
これを倍の50分弱で描くとどうなるのか
今では、ドラマ版も観てみたい。

アニメが13話しかないのは物足りないが、
私にとっては、日本人に生まれて良かったと
素直に思える作品のひとつになった。

ぜひ続編希望したい。
続編があるなら、鬼平の娘、お順と
息子、辰蔵の成長をもっと盛り込んだものだとうれしい。

投稿 : 2017/04/04
閲覧 : 327
サンキュー:

17

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