橙色特別室 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
いろいろと惜しいアニメ
月並みな表現になりますが、アニメっぽくない作品です。いまいち評価が上がらないのも頷けます。世間一般の人がアニメに求めているものが、この作品からは抜け落ちているんですね。重たい恋愛作品を求める人の多くは映画やドラマの方へと流れているので、ストーリの奇抜さや萌えキャラのいない当物語は、アニメ層向きの作品ではないだろうと感じました。商業的な数字や作品の評価が視聴側のニーズで変わるのは当然ですから、どれだけ本作の脚本が優れていようが「まあ、妥当な評価だろうなー」と思う次第です。
視聴後の個人的な感想は「すっきりしない」の一言でした。稚拙な表現しかできず歯痒いですが、非常に評価し難い作品です。登場人物たちの感情の機微を、映像作品らしい表現で描いているのでしょうが、どうにも心理が掴みにくい。というのも、物語後半に伏線回収や心情の変化を流し込んでいて、物語の展開についていけないのです。私の処理速度が遅いだけかもしれませんが、登場人物が多いなか、視点が二転三転するのはよくないなぁと感じました。
すっきりしない一番の問題は、物事の結果や感情の動きを明確にしていないところにあります。映像作品上しかたのないことですが、それにしても暗喩が目立ちます。直裁的な表現はほとんどなされていません。ノベルゲームや小説のような文字作品を映像作品に置き換える難しさは当然この表現の違いにあるわけですが、この作品は、その表現の差を埋めようとする努力がされていないように感じます。起承転結の『結』の部分が丸ごと詩的表現で書かれている小説を読んだ後味でした。
ただ、アニメとしての出来は良く、惹き込まれる演出が随所に見られます。ノベルゲー主人公らしい饒舌な心の声を文字として表現することで視聴側をテレビ画面に集中させたり、BGMを必要最低限にすることで耳を澄ませるよう仕向けたりと、魅せ方が上手いです。意外と作画は古く感じません。印象としては「綺麗なアニメ」です。まあ内容はどろどろですが…。
主人公が何かを失って、何かを得て。そうして顔付きが変わっていくさまは、心揺さぶられます。この物語で紆余曲折した主人公は、かなりのヘタレで優柔不断で最低な男ですが、僕には彼を責める言葉は思いつきません。誰しも何かに仮託して生きているわけであって、主人公はそれが女神だったというだけです。不憫です。恋愛脳とはまた別の問題なのでしょうね。まあ、理解はしかねますが。
思ったより中だるみは少ないですが、できれば時間と心と体に余裕がある時に観てほしいアニメです。つまり、さっくり簡単に観たい場合には向きません。私自身、疲れている時に観ていればまた違った評価になるだろうと思いますので。