aaa6841 さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
スカート(哲学)
アニメキャラのスカートは何故あんなに短いのか。誰しも一度は考えることかもしれない。
個人的にはあまり短すぎるスカートは好きではない。
何故か。単純に馬鹿みたいに見えるし、もっと言えばバランスが崩れていて美しくないから。
だがしかし、ここではそんな瑣末なことを追求したいのではない。
大体、スカートの長さなんてものはキャラ付けや世界観の範疇であって、時には内気なキャラクターであっても普通に短いスカートを履いていたりする。
別にそれについて違和感を感じないくらいに、もはやアニメの世界では当たり前の光景になっている。
例えば、ロールプレイングゲームでキャラクターの装備を全てひっぺがしたとしても全裸にはならないように、そこに何か布切れのようなものが残っていたとしても、それを以って服を装備しているとは認識しない。
その布切れを含めて一個のキャラクターである。
故にテコ入れ回において、女の子の水着姿に興奮を覚える登場人物がいる一方で、制服のスカートが短いことに熱を上げる者がいない。
それがアニメという世界なのだから!
それがアニメ界における学生服の立ち位置なのだから。
にもかかわらず、このアニメではスカートの短い生徒が教師にがっつり怒られている。
なななんと!このアニメではスカートを「衣服」として認識しているのである。
しかもその場で「直せ」と叱られている。
そう、このスカートは最初から短いスカートなのではなく、元は普通の長さのスカートなのに、それを手動で折り返すという姑息な手法によって緊急避難的に短くしているスカートなのである。なんだこのアニメわぁ。
その様子を目撃した主人公は何か虚しい感じにスカートの丈を直す。
スカートを直すという所作を、いやに哀愁を漂わせながら。あとちょっとエロい。
普通ならスカートを短くすることで露出的なエロさをアピールするところが、ここでは短くしたスカートを戻すという動きでエロを感じさせてくれる。
何て良いアニメなんだ。
{netabare}以下このアニメの良いところ。
■主人公、黄前久美子とは
吹奏楽部に入るのかと問われれば、なんとなく「考える」と言い、
かと思えば、その後すぐに「やめる」と適当に返事をしてみる。
でも結局、友達に誘われたときには「うん」と答えてしまう。
特に明確な目的もなく(おっぱいの成長を除く)
これといった目標もなく(おっぱいを除く)
もちろん将来の展望もない(おっぱい)
ただ、何かを変えなければ、という思いはなんとなく持っていて、小手先でどうにかしてみようとはする。
貧乳の憂鬱を生け贄に捧げてポニーテールを召喚してみたり。
また、それを一日でやめてみたり。
結果、髪の毛もっさもさだし。
その髪型からは微塵の覇気も感じない。
少しでも何かを変えてみれば自分の人生に重大な転機が訪れるかもしれないと信じて、降って湧いてくる幸運を待っている。
道端に落ちている100円玉でも見つけるようなノリで人生の意味を探している。
■幼馴染
黄前久美子は外面を取り繕おうとする習性があるので、家から外に出ればよそ行きの声になり、逆に家に帰ると声が低くなり抑揚が減る。
本当に自然体という感じのキャラクターで、まるでアニメキャラじゃないやつがアニメキャラのフリでもしているような感じがある。
そんな久美子が家族以外に対して唯一自然体で話すのが幼馴染の秀一。
何で秀一に対してだけは自然体で話せるのかと言えば、そりゃあ幼馴染だからってことになるのだが、だとすれば幼馴染ってなんなんだ?
例えば、電車を降りた久美子が秀一に声をかけられるシーン。
駅のホームで待っていた秀一は、少し離れた位置から久美子を呼び止めようとする。
久美子はそれをわざと無視する。
で、ここの無視の仕方が問題。
声をかけられたとき、一瞬視線を動かした以外は何も動作に変化がないので、角度的にその動作を見ているだけでは「意図的に」無視しているようには見えない。
無視していることにすら気づかせない高度な無視である。
もしこんな無視の仕方をされたら、やられたほうはどう思うだろう。
「何か考え事をしていて気づかなかったのかな?」
普通ならそれで終わりそうだ。
したがって、こいつら二人は普通じゃない。
何でそんなことを久美子がするのかと言えばもちろん、作中でそうなったように、このシチュエーションでそんな風に無視したとしても秀一はこっちにやって来るということがわかっているからだ。
そして秀一も、久美子が意図的に無視したと思っている。
つまりここで描かれているのは信頼関係。
二人の信頼関係をめちゃくちゃ可愛らしく描いた結果がこれである。
信頼関係を「無視」という「コミュニケーション」で表現している。
京アニよ、最高か?最高のアニメ制作会社か?
もうニヤニヤするしかないよね。
このシーンの何が面白いって、秀一に声をかけられる前の久美子は、下を向いて指を動かすイメージトレーニングをしながら歩いてるんだけど、秀一に声をかけられた後も手の動きが一切止まってない。
抜かりなく無視を実行している。
で、秀一に肩パンされる。
「いたっ」「無視すんなよ」で、このシーン終わり!
いや~それ以上の言葉はいらないんすね~。
■オーディションと夏紀先輩と久美子
久美子は合格して、夏紀先輩は落選したオーディション。
その後、放課後に付き合ってほしいと夏紀先輩が久美子に声をかけるシーン。
ここで、過去のトラウマを想起しながら返事をする久美子の台詞が以下の通り。
「えっ、あ、はい」
「あ、はい」
「あ、はい」
ほぼ「あ、はい」しか言ってない。
で後になるほど、どんどん嫌そうな言い方になる。
とは言っても相手は嫌いな先輩じゃないから、そこまで嫌そうな言い方はしないんだけど、それでもちょっとくらいは嫌だということをアピールしておきたい。そんな言い方。
なんなんだこのリアリティは。
曲がりなりにもアニメキャラの一人なのに、そんな風貌でこんなリアル返事をぶっ込んでくるのは卑怯ではないか。
これはもう笑うなって言うほうが無理ですね。頭を抱えながらニヤニヤするレベル。
夏紀先輩にしてもそこそこ気だるいオーラというか特殊な空気は持ってるんだけど、やっぱり久美子は何かが違う。
言うなれば次元が違う。
髪の毛もっさもさだし。
■そんな感じで
本当に良く動くし、表情の変化も細かいし、声の演技には驚かされました。
キャラクターが生きていると感じられる稀有なアニメです。それだけ緻密に人物描写がされている。
だからキャラクターの心情を理解したくなる。
とは言ってもリアルタイムで追っている一視聴者としては、全てを整理しながら見られているわけじゃないんですけどね。
順調に物語を理解しているつもりになっていても、急に理解が追いつかなくなることもある。
いやむしろよくある。ん?ってなる。
何でそんな言動を見せるのか気になって、一瞬置いていかれる。
だけど置いていかれたまま物語は進んでいっちゃう。
でも何か良いシーンだったなと思わされる。
演奏直前の空気、楽器を抱える姿、息を吸い込む音、指の動き、目の輝き、声、台詞、表情、音楽。何を取っても良い。
だから二週目も見る。三週目も見よう。
結果、最高のアニメだこれ。
そう思わせてくれる作品です。{/netabare}