takarock さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
時代と共に移り変わってきたあれこれ
1999年に放送されたサンライズ制作の作品です。
いつかは再視聴したいとずっと思っていた作品でもありますw
私の中で忘れられない作品なのでw
本作のあらすじを簡単に説明すると、
そうですね、例えば宇宙船あにこれ号にあにこれ住人487人が閉じ込められてしまった。
あにこれの運営に救助を求めるも何故か攻撃を受けてしまう。
猜疑心や疑心暗鬼が募るあにこれ号の中であにこれ住人たちの共同生活が始まった。
あっでも、本作では閉じ込められたのは少年少女「だけ」なので、
この例えはちょっと無理がありますねw
私なんかは即、物語外へ放り出されてしまいますw
非常にこの時代らしい作品だと思います。
これは何度か他のレビューでも触れたことですが、
90年代後半は社会的にも個々人のレベルでもどこかふわふわした、
不安定な状況だったと思います。実際にそうした事件も多発していましたからね。
価値紊乱の時代となんかのレビューで書いた気がします。
その根底にあったのは、やはり「世紀末に人類は滅亡してしまうのではないか」という
恐怖だったり、期待だったりしたのかなと。
「人類の滅亡」といえば思い浮かぶのは、90年代を代表する「新世紀エヴァンゲリオン」ですが、
思えば「宇宙戦艦ヤマト」にしたって、「機動戦士ガンダム」にしたって、
これがモチーフになっています。
このモチーフを制作側と視聴者が共有できた時代、
それ故に社会的な現象を巻き起こす程の大ヒット作品となったと、
こうした見方もできるのではないかと私なんかは思っています。
本作は、
極限状態に置かれたら人はどのような行動を取るのか、どういう精神状態に陥ってしまうのか
これを主要テーマに据えている訳ですが、
極限状態というのを人類を滅亡させてしまう程の厄災と置き換えれば、
やはり非常に世紀末臭が強いアニメだと思います。
個人的に思うのは、90年代後半はバブル崩壊後とはいえ、
ハルマゲドンに対して恐怖したり、期待したり、
それを迎えるにあたっての活力がまだあった時代だったと思っています。
しかし、結局何も起こらなかった。
そして、未だ長い長い不況のトンネルから抜け出せない現在の日本に漂うのは、
「諦観」。
もう「人類の滅亡」をモチーフにした作品なんて荒唐無稽で、
ただただ白けるだけ。
求められるのは、日々擦り切れられる心を潤してくれる「癒やし」。
このようにアニメ視聴者の需要も時代と共に推移していったのかもしれませんね。
もちろんこれはもの凄く大雑把な括りですし、例外なんてものはいくらでも存在しますけどねw
まるで前世紀の遺物のような本作を今現在視聴する意義はあるのか?
という問いに対して、私は「ある」と答えるでしょう。
かつては起こるかもしれないハルマゲドンからの極限状態というのをイメージしていたかもしれませんが、
現在はこれとは違った角度から極限状態というのをイメージできると思います。
それを決定付けたのは2011年の東日本大震災です。
震災後に人々の意識は大きく変わりました。
「何時何が起こってもおかしくない」
こういった危機意識を世紀末後から再び強烈に植え付けられたのだと思います。
再びこの危機意識を制作側と視聴者が共有できるようになったとも言えますし、
震災後、そうした作品はアニメに限らず増えていっています。
極限状態に置かれたら人はどのような行動を取るのか、どういう精神状態に陥ってしまうのか。
私は90年代後半はまだ活力があった時代で、現在はもはや諦観の域に達していると書きましたが、
そうした時代背景を受け、「あの頃」と「現在」では同じ極限状態に置かれても
人の価値観だったり、行動規範だったりもまた違えてくると思っています。
現在ならば、表向きはもっと従順で、裏で、例えばネット上で
気に入らない奴の誹謗・中傷をするというやり方になってきたりするのかなと。
人を傷つける方法も社会や機器の変化によってまた変化しているのだと思います。
その観点から言えば、
本作は非常にリアリティのある人間描写がなされている作品とは言い難いのかもしれません。
しかし、本作は訴求力の強い作品で、心の深奥に響く作品だと思います。
まぁ世紀末当時視聴していたということが多分に影響していると思いますけどねw
それでも、これまで数多くの作品を視聴してきましたが、
私の中では間違いなく強烈に記憶に残っている作品の1つです。