ポッチャマン さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
お金とは...未来とは.....?
これはまた、難しいものを観てしまった。観終わってもまだもやもやが消えませんが簡単に書いておきます。
この作品は実際のお金の取引を、「金融街」と呼ばれる異空間で繰り広げるゲームに見立てているのが特徴で、経済的な知識が豊富なアイデアはこのアニメ随一だと思います。
主人公の公麿は、突然このゲームに招待された一介の経済学部の学生で、ここで会う人たちに影響されて、最後には一つの答えを出します。
まずは、このゲームの要素として、
★元手となるお金を自分の“未来”を担保にして得る。そのときに資産(アセット)というキャラと一緒にディールというゲームに参加する。戦いに勝てば掛けたお金の倍額を相手から奪える。
★アセットの使える技は、例えば公麿の使う真朱というアセットなら、スコーチドアース(焦土作戦)という現実でも使われている金融用語からとられている。
★ゲーム中に他のプレイヤーに自分の持つ株を10個まで公開して売ることができ、買われると資金を調達でき、逆転も可能になる。
★ディールに負けると、自分が影響を及ぼせる範囲で、身の周りに悪影響が生じる。負債が大きいと、これまで存在したものや人が現実に無かったことになる。
などなど、かなりハイリスクのゲームが繰り広げられています。全11話と少ない話数の割には設定と世界観がかなり斬新で綿密に出来ているのが特徴です。
だけどその分、経済や金融など扱っているテーマが社会的でかなり難しく、終盤には “未来”と“現在”のどちらを残すか など、物語としての着地点が理解しづらいという難点がある作品だと感じます。
私もあまり理解できてないのですが。
公式サイトにある大坂直樹さんの解説を読んでもある程度の解釈は得られますが、全体的なストーリーは考察が人それぞれ違ってくるので、みなさんそれぞれに感じ取って考えてみて下さいという意味で私は捉えました。
ノイタミナで放送されたこの作品のメッセージ性は非常に高く、人それぞれたくさん感じとれますが、作中第9話で竹田崎が「信用があれば金なんていくらでも入ってくる」と言っていたことから、この作品のように、現代に本当にハイパーインフレが起こり、円の価値が暴落したら...という国債まみれのこの国の未来を風刺していて、制作スタッフの痛快なクリエイティブ魂を感じとれます。
また、本作の後半には、お金を使って未来と現在のどちらを選ぶかというテーマが鍵になってきていて、これは三國と宣野座の二人の立場が対照的で、説明しやすいです。
三國は「未来といっても、しょせん現在からの地続きだ。現在が失われれば、未来も存在しない。」として、
宣野座は「可能性の失われた未来しか残らないなら、現在がある意味がない」。と、担保にする未来とは何なのかについて作中で議論されていきます。
私は最後の公麿の行動で世界がどうなったかがよく分からないんですが、お金の執着しすぎている人たちが多い世の中に、問いかけるような展開にラストはなっていて、ここも面白いと感じたところです。
とはいえ、やはり尺の短さから展開が足早に進んでいき、ラストもかなり意見が分かれる終わり方なので、良作といえるかは正直分からないです。初回からずっとものすごいテンポと情報量を振りまいているので、観るときはある程度の覚悟を持った方が良いかもしれませんね。